フォード・フィエスタ・レッド / ブラック・エディション
公開 : 2014.06.18 23:40 更新 : 2017.05.29 18:54
■どんなクルマ?
仮にこのクルマを購入したとしよう。あなたの友人はこう尋ねるはずだ。「どうしてスポーティな新しいフィエスタの排気量は1ℓしかないの?」と。「リッターあたりの馬力はブガッティ・ヴェイロンよりも大きんだ」これが模範解答である。
言うまでもなくこれは、フォードがこの車のルーフやミラーを別の色に塗装してしまったことへの答えにはならない。こちらを説明するには、レッド・エディションとブラック・エディションの2種類が用意されていると言えば良いだろう。どちらかの色を好みで選べることに加えて、1.6ℓゼテックSの後継車種だということも伝えておくといいかもしれない。
われわれはフィエスタ・ゼテックS 1.6をこよなく愛し、1年間の長期テストを行った。5速MTではあったものの、チューニング・メーカーであるマウンチューンによって手を入れられたエンジンは最終的に140psを発揮し、優れた乗り心地とハンドリングのおかげでいつだって楽しく運転できた。
■どんな感じ?
ここ最近は、より硬派で速いフィエスタSTが脚光をあびる一方、ゼテックSの持つ温かみは間違いなく先代のそれを引き継いでいる。市街地や高速道路問わず、驚くほどにドライバーに従順で、切れ味鋭いステアリングのおかげで九十九折でもコントロールを失う気配すらない。
賢明なことにフォードはシャシーにそれほど手を入れずに、ゼテックS同様、標準比-10mm分車高が低められ、スプリング・レートはフロントとリアがそれぞれ12%と6%固められた。どうしてリアは6%の締め上げに留められたかというと、標準のフィエスタに比べてトーション・ビームそのものが11%分固められたことによるようだ。言うなれば、まさに’美味しい’味付けというわけだ。
ステアリングに関してはトルクが増強され、つまりは重さを増し、リムから伝わるインフォメーションもより明確になった。16インチのホイールが標準で、テスト車が装着している17インチ版はオプションで選択することが可能だ。
1.6ℓに比べて35kgのダイエットに成功した1.0ℓエンジンの恩恵を受けて、レッド/ブラック・エディションを駆る楽しみは底上げされた。STの日常的な乗り心地に対して硬すぎると感じるならば(筆者はその意見に心より理解できる)、今回のモデルはあなた自身を十分満足させるだろう。なぜならレスポンスに優れ、適度な支持剛性を持ち、正確なステアリングを持ち合わせたこの車は、フォードの前例に漏れず敏捷に走り抜けることができるからである。
マウンチューン製1.6ℓエンジンに比べると、ターボ加給ゆえ必然的にシャープネスがスポイルされた感じは否めないが、言い換えればマイルドになっているということだし、1.0ℓのこのエンジンがとても楽しいことの証明にもなる。速度に対して、エンジンはあまり仕事をしていないように感じるかもしれないが、5速まで使いきり、エンジンを目一杯に回せばそんな事も気にならないはずだ。
■「買い」か?
夢中になれるほど楽しい上に、1kmあたりのCO2排出量は104gまで抑えられ、22.2km/ℓという高燃費も相まって、強くお勧めできる。フォードはコストを高め、機構を複雑にしてまで6速を追加する必要はないと主張するし、それについても我々は異論がない。相変わらず、このクルマにはたくさんの時間を共にする価値があるのだ。
(マット・プライヤー)
フォード・フィエスタ・レッド / ブラック・エディション
価格 | £15,995(277万円) |
最高速度 | 201km/h |
0-100km/h加速 | 9.0秒 |
燃費 | 22.2km/ℓ |
CO2排出量 | 104g/km |
乾燥重量 | 1091kg |
エンジン | 直列3気筒999ccターボ |
最高出力 | 140ps/6000rpm |
最大トルク | 21.4kg-m/2000rpm |
ギアボックス | 5速マニュアル |