フェラーリ250GT SWBを現代に RMLショートホイールベースへ試乗 ベースは550 後編

公開 : 2022.04.09 08:26

1960年代のフェラーリを代表するモデルを現代技術で再現した、RML社。英国編集部が、完成間近の試作車へ試乗しました。

550用V型12気筒エンジンは485ps

RMLショートホイールベースのダッシュボードには、プロトタイプということで、モーテック社製のデジタルメーターが取り付けられていた。センターコンソール前方には大きなタッチモニター組み込まれるということだが、こちらも未実装だった。

だとしても、インテリアには見惚れる訴求力がある。ドリル加工されたアルミ製ペダルは、550マラネロ用。トランスミッション・トンネルの上部にオープンゲートが切られ、球状のシフトレバーが伸びている。

RMLショートホイールベース・プロトタイプ
RMLショートホイールベース・プロトタイプ

美しく造形されたアルミのコアを、ソフトなレザーが包むステアリングホイール1つとっても、芸術品のよう。前方には、ボンネットから立ち上がるエアインテークの膨らみが見える。素晴らしい。

エンジンは、自然吸気の5.5L V型12気筒で、最高出力は485ps。フェラーリ550マラネロと基本的に変わらない数字だが、サウンドはよりアグレッシブ。歓迎できる変化だ。

アクセルペダルのレスポンスは正確で、シャープすぎない。このクルマには適した味付けといえる。クラッチペダルは重く、シフトレバーの動きは渋い。RML社のエンジニアが、遊びを調整している最中だという。

それでも、想像以上にスムーズに運転できる。マツダロードスターと変わらないくらい、扱いやすい。驚くほど快適なドライビングポジションが、その印象を強めている。すべてに特別感が漂うが、同時にとても自然でもある。

剛性感の高いシャシーと正確な操縦性

テストコースの運転で特に感心したのが、シャシーの剛性感。フロントのサブフレームと、スチール製フロアの一部分は550マラネロ譲り。そこへ、カーボンコンポジット素材のモノコック・ボディが被さっている。

マクラーレン720Sは上方がオープンのカーボン製タブ構造を持つが、それを逆さまにしたようなもの、と考えても良いかもしれない。つまり、頑丈だ。

RMLショートホイールベース・プロトタイプ
RMLショートホイールベース・プロトタイプ

サスペンションは、オーリンズ社製のダンパーと、スチールコイルという組み合わせ。テストコースの悪意ある凹凸部分では縮みきってストッパーに当たっていたが、プログレッシブ・スプリングも開発中だとか。姿勢制御は、大幅に良くなるはずだ。

ショートホイールベースの操縦性は軽快で、反応は正確。しかし、若干の緩さも残されており、クラシカルなルックスと不思議なマッチングを見せる。

パワーステアリングも、550マラネロ由来の油圧タイプ。812スーパーファストの超クイックなレシオと比べて、オリジナルの250GT SWBが持つキャラクターに近いはず。

軽く握った指先で、フロントノーズの向きを変えていける。それでいて、うかつにクシャミをしても進路が乱れる心配はない。

乗り心地にも唸らされる。車内空間へ伝わる衝撃を最小限に抑えながら、路面から浮かんだようにスムーズに走る。荒れた舗装の感触は、想像以上にステアリングホイールを通じて手のひらに伝わってくるが、このクルマの雰囲気なら許されると思う。

記事に関わった人々

  • 執筆

    リチャード・レーン

    Richard Lane

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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