新風を吹き込むSUV マセラティ・グレカーレへ試乗 MC20用V6ツインターボで530ps 前編

公開 : 2022.04.05 08:25

アルファのプラットフォームに、スーパーカー用エンジンと上質なレザーで仕立てた新型SUV。英国編集部が評価しました。

ブレンドへ新しい風を吹き込む新型SUV

イタリアの伝統あるブランド、マセラティ。ここ10年程は、余り日の当たる存在ではなかったといっても、大げさではないだろう。

21世紀に入り、クルマの人気カテゴリーとしてSUVが台頭してきた。多くの自動車メーカーで、現在の稼ぎ頭の1つになっている。

マセラティ・グレカーレ・トロフェオ(欧州仕様)
マセラティ・グレカーレ・トロフェオ(欧州仕様)

ドイツのスポーツカー・ブランドでも同様。なかでもDセグメントに属するポルシェ・マカンは、発売から8年間で驚くほどの収益を生み出している。高性能と高重心とが共存できることを、腕利きのドライバーに実感させた有能なSUVだ。

そんな存在を、マセラティがラインナップに欲しがっても不思議ではない。むしろ、今まで用意して来なかったことが不思議なほど。

マセラティにも、オフロードが似合うモデルは存在する。2016年に発売されたレヴァンテだ。しかし、全長5005mmの大きなボディを持ち、マカンが属する主力セグメントには属していなかった。

レヴァンテは、類まれな運転の楽しさでコンパクトなマカンに及ばず、圧倒的な動力性能という面ではライバルのカイエンに及ばない。ラグジュアリーなSUVではあるが、訴求力が充分だったとはいえないと思う。

しかし、最近のマセラティには勢いがある。センセーショナルなスーパーカー、MC20の登場で、輝きを失いかけていたブランドに新しい風が吹き込んだ。続いて姿を表したグレカーレへも、自ずと高い期待を抱かずにはいられない。

ジョルジオ構造にMC20用エンジン

ちなみにグレカーレとは、地中海に吹く風の意味。ハイブランドのDセグメントSUVとしては、周囲よりだいぶ遅れての投入ではあるが、新規顧客をショールームへ誘い込む重要な役目を負っている。追い風は吹くだろうか。

さて、まずはマセラティ・グレカーレの内容を確認していこう。基礎を構成するのは、極めて機敏なSUV、アルファ・ロメオ・ステルヴィオ・クアドリフォリオも採用する、ジョルジオ・プラットフォームだ。

マセラティ・グレカーレ・トロフェオ(欧州仕様)
マセラティ・グレカーレ・トロフェオ(欧州仕様)

ホイールベースは、全長4687mmのステルヴィオから50mm延長されている。グレカーレの全長は4847mmと、ひと回り大きい。

そのおかげで、リアシートの空間はライバルよりゆとりがある。荷室容量も570Lと有利。ファミリーでの移動がメインのクルマとして、大切なポイントだといえる。

現在の時流に合わせて、マイルドがつくものの、パワートレインにはハイブリッドが用意された。さらに2022年後半には、純EV版のグレカーレ・フォルゴアが投入される予定にある。

とはいえイタリアン・ブランドとして、パワフルな内燃エンジンもまだ不可欠。フラッグシップを務めるのが、トロフェオだ。スーパーカーのMC20用に開発された、ネットウーノ・ユニットがフロントに搭載される。

SUVへの搭載に合わせて、若干デチューンされている。それでも、3.0L V型6気筒ツインターボ・ガソリンは、最高出力530psと最大トルク63.0kg-mを発揮する。

記事に関わった人々

  • 執筆

    ジェームス・ディスデイル

    James Disdale

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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