【詳細データテスト】フォルクスワーゲン・トランスポーター 平凡な走り 盛大なノイズ あくまでバン

公開 : 2022.04.09 20:25  更新 : 2022.04.26 03:09

操舵/安定性 ★★★★★★☆☆☆☆

運動性は貨物運搬用バンに一般的なチューニングで、ところどころチャレンジングなカントリーロードでペースを上げた際のボディコントロールはかなり一定していて、路面に食いつき腰のすわった走りを見せる。空荷の状態でのテストだったが、そういうときにはこうだろう、と期待するような安定ぶりだ。

しかし、背の高いボディを考えると、ハードなコーナリングも、ハンコック製スポーツタイヤのグリップもみごとなものだ。もっとも、道路が広く、路面が十分にスムースな場合には、という話だが。

バンに乗り慣れていれば、スポーツラインの走りには多少なりとも進歩したところを感じるだろう。しかし、スポーティな乗用車を基準にしたら、その名前に期待する走りに楽しさは見いだせない。
バンに乗り慣れていれば、スポーツラインの走りには多少なりとも進歩したところを感じるだろう。しかし、スポーティな乗用車を基準にしたら、その名前に期待する走りに楽しさは見いだせない。    LUC LACEY

スポーツラインがコーナーでみせるロールはかなり大きいが、重量を左右均等に配分し続けるのを妨げるほどではなく、驚いたことにずっとアンダーステアが出続けるものでもない。旋回はのっそりしているものの、コーナリングラインを決めるとそれをきっちりなぞってくれる。ただし、途中に大きめのバンプがあった場合は別だが。

フロントのグリップは、アペックスからそこそこの速さで出口へ向かっていけるくらいにはしっかりしている。目的地へ急いでいて、その過程でどのような走り方をするかは気にしないようなバンの運転手なら、トランスポーター・スポーツラインのグリップとトラクションやボディコントロールを、普通のバンよりややステップアップしたものに感じるのではないだろうか。

反対に、もしも普段から、2022年現在の平均的なパフォーマンスカーに乗り慣れていたらどうか。アジリティやシャシーバランス、ダンピングや機敏さ、操縦系のフィードバック、そして全般的な走りの熱中度のようなものの基準がそこだとしたら、ただのバンだとしか思えないだろう。

つまり、乗り心地が忙しなく、扱いにくいクルマに感じるはずだ。しかも、レスポンスに鋭さは皆無で、操縦系に生き生きしたところもまったく見いだせないはずだ。

というのも、トランスポーターのステアリングは背の高いボディを暴れさせず、積荷を崩れさせないように仕立てられているからだ。中立付近はスローで、非常に軽く、鼻先の向きを変える動きにホットなものは感じられない。

コーナーをひとつ抜ければ、十分速いコーナリングはできるが、とくに楽しさは感じられないことがわかるだろう。座面がロール軸よりかなり高いので、車体が少しでも傾くと身体に感じるし、シートは必要なときに身体を支えてくれるほどホールド性がないのだ。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マット・ソーンダース

    Matt Saunders

    英国編集部ロードテスト・エディター
  • 執筆

    イリヤ・バプラート

    Illya Verpraet

    英国編集部ライター
  • 撮影

    リュク・レーシー

    Luc Lacey

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    関耕一郎

    Kouichiro Seki

    1975年生まれ。20世紀末から自動車誌編集に携わり「AUTOCAR JAPAN」にも参加。その後はスポーツ/サブカルチャー/グルメ/美容など節操なく執筆や編集を経験するも結局は自動車ライターに落ち着く。目下の悩みは、折り込みチラシやファミレスのメニューにも無意識で誤植を探してしまう職業病。至福の空間は、いいクルマの運転席と台所と釣り場。

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