EV充電問題 バッテリー交換は充電スタンドの代わりとなるか? 欧州で再注目

公開 : 2022.04.09 06:05

EV充電時間を省くバッテリー交換方式は、欧米でも普及するのか。ノルウェーの交換ステーションを訪ねました。

EVのデメリット解消 たった5分で満充電に

ノルウェーの電力供給会社でマネージャーを務めるフランク・スカルパスは、充電器の隣に設置されたハイテク洗車機のような構造物が、EVバッテリーを交換できるという情報をなんとか咀嚼して飲み込もうとしている。「たった5分でいいんですか?それこそ夢のようです。充電は間違いなく面倒ですからね」

ノルウェー南部のリエにあるこのバッテリー交換ステーションは、テスラとよく比較される中国のEVメーカー、ニオ(NIO)が欧州で初めて設置したものだ。仕組みは単純。この交換ステーションは、消耗したEVのバッテリーを5分程度で新しいものに交換する。

ニオのバッテリー交換ステーション。大型の洗車機のような姿をしている。
ニオのバッテリー交換ステーション。大型の洗車機のような姿をしている。

ニオはすでに中国で836か所の交換ステーションを運営しており、今年末までに全世界で1300か所に増やす計画だ。そのうち20か所はノルウェーに設置予定で、ドイツでも大規模なサービス開始に向け準備を進めている。いずれ英国にも導入される予定だ。

「独自のセールスポイントになる」

ニオの欧州事業マネージングディレクターであるホイ・チャンは、AUTOCARにこう語っている。

失敗の印象が強い交換方式 中国では普及進む

バッテリー交換というアイデアは新しいものではない。テスラは当初、スーパーチャージャー・ネットワークを導入する前にこの方式を提案していた。欧州では、イスラエルのベタープレイス社が2008年にルノーと契約を結び、フルエンスZEというバッテリー交換式の電動セダンを開発。デンマークとイスラエルに交換ステーションが建設されたが、普及することはなく2013年にベタープレイスは破産を申請した。

しかし、欧州では休眠状態だったバッテリー交換方式だが、中国では一気に拡大しつつある。ニオは現在、1日あたり3万回の交換が可能であるとし、市場をリードしているが、その差を縮めようとする企業も出てきている。この技術に投資しているのはバッテリー製造大手のCATLで、Evogoというサービスを立ち上げ、1分以内に交換できるとしている。

交換ステーションの内部。ここにクルマを乗り入れると、自動で交換作業が始まる。
交換ステーションの内部。ここにクルマを乗り入れると、自動で交換作業が始まる。

一方、オウルトン・ニュー・エナジー(奥動新能源)社は、長安や東風を含む20の自動車メーカーと協力し、交換可能バッテリーを搭載したEVを開発すると宣言している。また、ボルボロータスの親会社であるジーリー(吉利汽車)は、昨年、全世界で5000か所の交換ステーションを展開する計画を発表した。

中国では、この技術はタクシーやトラックにも使われている。ブルームバーグNEFの調査によれば、中国で昨年販売された「新エネルギー」大型商用車1万513台のうち、31%にバッテリー交換技術が搭載されているとのことだ。

バッテリー交換が従来の燃料補給の容易さに最も近いというのは、世界の石油会社も同意見だ。昨年、英国の石油大手BPはオウルトン社とバッテリー交換サービスの開発に関する提携を結んだほか、ニオの交換ステーションの多くは中国の石油大手シノペック(中国石油化工)の敷地内に設置されている。また、ニオは12月にシェルと、欧州と中国に交換ステーションを共同建設する契約を締結した。

記事に関わった人々

  • 執筆

    AUTOCAR UK

    Autocar UK

    世界最古の自動車雑誌「Autocar」(1895年創刊)の英国版。
  • 翻訳

    林汰久也

    Takuya Hayashi

    平成4年生まれ愛知在住。幼少期から乗り物好き。住宅営業や記事編集者といった職を経て、フリーランスとして自動車メディアで記事を書くことに。「誰も傷つけない」「同年代のクルマ好きを増やす」をモットーにしている。イチゴ、トマト、イクラなど赤色の食べ物が大好物。

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