受け継がれるDNA ロールス・ロイス・スペクター 新EVの試作車へ同乗 ゴールの25%段階
公開 : 2022.04.17 08:25
ロールス・ロイス初の純EVとなる、ラグジュアリー・クーペのスペクター。試作車へ英国編集部が同乗しました。
正しいDNAを受け継いだクルマ
ロールス・ロイスの技術者によれば、同乗させてもらったスペクターのプロトタイプは、目指すゴールの25%程度の状態だという。それでも、唸らされるほどの乗り心地と静寂性を実現していた。
目標とする基準がいかに高いのか、伺い知れる事実だといえる。多くのプレミアム・サルーンが備える質感に、すでに到達していたのだから。
今回、新しいロールス・ロイスを味見させてもらったのは、スウェーデンの北、北極圏が迫るアリエプローグという町の郊外に広がる一般道。開発責任者のイェルク・ワンダー氏と一緒だ。
「間違いなく、成功したシーズンだったといえるでしょうね。正しいDNAを受け継いだクルマとして、初期ステージの良い段階にあります」。と、ワンダーが満足気に運転席から話す。
プロトタイプの助手席に座る筆者も、ロールス・ロイスらしさをしっかり感じ取れる。世界で最も静かで、最も快適なクルマとして、既に充分評価できる仕上がりに達している。
ワンダーが、凍結した路面をうれしそうに運転している。オンデマンド・トルク機能を確かめながら。クルマの安全性を高めつつ、予測的に制御しているようだ。大きなロールス・ロイスは、至って安定したまま不安感なくコーナーを抜けていく。
純EVで目覚ましく高まる快適性や洗練性
パワートレインの動力性能やシャシーの洗練具合は、かなり高いようだ。スペクターの操縦性を、一層スポーティなものに引き締めたいという考えはあるのだろうか。
ワンダーが答える。「これはクーペなので、操縦性を高めたい気持ちはあります。ですが、快適である必要性もあります。スポーティ過ぎる特性は、わたしたちのクライアントには適していません」
「ステアリングは、極めて正確でなければなりません。ですが快適で、安全だと感じることも求められます。クルマに乗せられているという感覚なしに」
開発テストは、細かいセッティングの領域に進んでいる。スペクターの複雑なシステムが、すべての気象条件や道路環境で正常に機能するのか、確認する段階にあるそうだ。
「非常に暑い状況での動作についての知見はあり、予測もしています。今は、この(極めて寒い)環境でテストする段階です」
スペクターの開発で重要なポジションにいるのが、マーティン・クリスティー氏。ロールス・ロイスのシニア・エンジニアとして、多くのモデルの最終調整に携わってきた経験を持っている。
電動化技術へ取り組む現在の同社について聞いてみた。「沢山のおもちゃを手にした、子供のようですね。実現できる内容には、呆れてしまうほどです」。と笑顔を浮かべる。快適性や静寂性、洗練性を目覚ましく高めることが可能なのだろう。