受け継がれるDNA ロールス・ロイス・スペクター 新EVの試作車へ同乗 ゴールの25%段階

公開 : 2022.04.17 08:25

完全な沈黙に人間は我慢できない

スペクターの開発で技術者を悩ませていることの1つが、歩行者にクルマの接近を知らせるノイズ。ほぼ走行音を発しないため、後方から走ってくると気付かない可能性が高い。

従来からロールス・ロイスは静かで落ち着いていた。だが、内燃エンジンとエグゾーストが備わらない純EVのスペクターは、別次元といえる水準を獲得しようとしている。

ロールス・ロイス・スペクター・プロトタイプ
ロールス・ロイス・スペクター・プロトタイプ

車内を完全な沈黙状態にすることも可能だという。しかし、それが最適とも限らないようだ。同社技術者のミヒアル・アヨウビ氏が説明する。

「クルマのノイズの発生源には、エンジンやエグゾーストのほかに、気流や回転するタイヤなどがあります。純EVでも後者の2つは存在します。ノイズを残すか完全に消すか、顧客へ選択させることも可能ではあります」

「しかし、完全な沈黙に人間は長時間耐えることができません。ある程度の小さなノイズが必要です」

風切り音については、可能な限り低減させるエアロダイナミクス・パッケージを開発済みだという。ロードノイズも、タイヤの供給元と協議し調整を進めているそうだ。

「サプライヤーは、わたしたちとの仕事に嫌気が差していたようですが」。と冗談交じりにアヨウビが振り返る。要求は相当に高いのだろう。

「タイヤは道路とクルマを結ぶ唯一の接点。エネルギー効率やノイズ、安全性、動的能力など、膨大な仕事をこなす部品です。ロールス・ロイスが履くものとして、完璧であることが求められます」

ロールス・ロイスの純EV時代を切り拓く、スペクター。完成が楽しみでならない。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マーク・ティショー

    Mark Tisshaw

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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