アキュラILX 2.0

公開 : 2014.06.20 23:50  更新 : 2017.05.29 19:59

■どんなクルマ?

北米を中心に展開されるホンダの高級車ブランド、アキュラにラインナップされるコンパクト・ラグジュアリー・セダン。2012年2月のシカゴ・モーターショーで発表され、同年より発売が開始された。

モデルラインナップは、2ℓ/2.4ℓのガソリンエンジンと1.5ℓ×IMAハイブリッドの3モデル。このドライブトレインから想像されるとおり、メカニズム面ではホンダ・シビックをベースとし、専用のデザインを持つ内外装と組み合わされる。

アキュラ・ブランドの市販車としては初めてハイブリッドが設定されたILXだが、2015年モデルでは2ℓ/2.4ℓのガソリン・エンジンのみとなることが発表されている。この2種類のガソリン・エンジンは、2ℓがSOHCのR型、2.4ℓはDOHCヘッドを持つK型と、性能面では大きな開きがある。トランスミッションも前者は5速AT (パドルシフト付き)、後者は6速MTのみとなる。

■どんな感じ?

今回、試乗したのはILXの販売台数の過半数を占める2ℓモデル。トランスミッションはパドルシフト付き5速ATで、スペック面においては、ベースとなったホンダ・シビックと大きく変わるところはない。

しかしラグジュアリー・ブランドゆえに内外装の仕立ては凝っており、外観ではアキュラのブランドフェイスである五角形のグリルを中心に、クールな印象を与える薄目のヘッドライトやテールレンズ、抑揚のつけられたリア・フェンダーのプレスラインなど、アキュラらしいスポーティなフォルムを演出している。

そしてエクステリアと同様に、インテリアの意匠も専用仕立て。やや重ためのドアを開けると、これもアキュラ各モデルに共通する左右対称のデザインを持つインパネが出迎えてくれる。インテリアはアルミ地とアイボリーを効果的に組み合わせた明るい印象のもので、エントリー・モデルとはいえアキュラらしさは充分に感じられる。

室内空間の広さもまずまずで、約180cmのドライバーがシートポジョションを合わせても、後席には大人3人が快適に乗ることができる広さが保たれている。またサンルーフ装備車であっても、頭上空間に余裕があることは特筆すべきところだ。

リアのタイヤ・ハウスにより少々スペースは犠牲となっているものの、トランク・ルームの広さは車体サイズからは想像できないほど。3人分のスーツケースとカメラバッグなどを飲み込み、さらに細部には小さいカバンを収納できるスペースが残る。

大人3人分の荷物と乗員を載せた状態では、さすがに動力性能は余裕たっぷりとはいかないけれど、その走りは2リッターセダンというのが信じられないほど。R型SOHCはいわゆる燃費指向のエンジンで、DOHC VTECのようにエキゾチックなパワーカーブなどは持たないが、6000rpmまでスムーズにフケ上がる。

ステアリング裏に備えられたパドルシフトは右がプラス、左がマイナス。極めて短いストロークでカチカチと小気味よくシフト操作することができ、コンパクト・スポーツセダンらしさは充分に感じることができる。ステアリングに備えた両手でシフト操作を楽しみ、迫り来るコーナーを次々とクリアしていく走りは、FFスポーティ・セダンとして至高のデキ。上位モデルであるTSXやTL、RLXなどと比べても絶対的に小さく軽いぶん、ドライバーの意思通りに走ってくれる感覚はILXのほうが圧倒的に上だ。その軽快感はかつてのアコード・ユーロRを思いださせてくれる。

■「買い」か?

日本市場では需要が少ないコンパクト・セダンの世界だが、北米市場では常に一定の販売台数が見込めるベーシックな市場。そのなかでもアメリカン・メーカー以外がほとんどを占めるのがラグジュアリー・コンパクト・セダンで、これまでメルセデス・ベンツCクラスBMW 3シリーズアウディA4などが鎬を削っていた。しかしこれらの車種が大型化・豪華化を進めるにつれ車両価格も上昇しており、中心価格帯は限りなく$40,000に近づいている。

そのなかで$30,000以下という車両価格で登場したアキュラILXは、より若い世代を中心に支持を集めた。アキュラ (=ホンダ) らしく、ラグジュアリーセダンのなかにもスポーティさを前面に出したフィーリングは他車では味わえない楽しさだ。

とくに6速MTのみの組み合わせとなる2.4ℓエンジン搭載車は、同じパッケージを採用するシビックのスポーティ・グレード、Siの仕上がりぶりからみても、相当なパフォーマンスを秘めていることは間違いない。CL1、CL7と続いたアコード・ユーロRは後継車種を持たずにグレードが消滅してしまったが、その走りっぷりはこのILXに受け継がれているといっていいだろう。

アキュラ・ブランドの日本国内導入が見送られてしまった現在、このILXが国内の正規ディーラーで販売される可能性は限りなくゼロに近いが、いくつかのショップが並行輸入という形で販売を行っている。販売価格においても、アフターサービスにおいても決して敷居が低いとはいえないけれど、それを乗り越えて手に入れるだけの魅力が、このILXにはあると思う。

(佐橋健太郎)

アキュラILX 2.0

価格 $27,050(277万円)
最高速度 NA
0-100km/h加速 NA
燃費 11.9km/ℓ
CO2排出量 NA
乾燥重量 1340kg
エンジン 直列4気筒2ℓ
最高出力 150ps/6500rpm
最大トルク 19.4kg-m/4300rpm
ギアボックス 5速オートマチック

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