1965年のル・マン・レーサーを復刻 ビッザリーニ5300 GT リバイバルへ試乗 限定24台

公開 : 2022.04.21 08:25

過小評価されてきたクラシックレーサーが、現代技術で復活。英国編集部がプロトタイプへ試乗しました。

フェラーリランボルギーニの設計に関与

本日ご紹介するのは、1965年に名を刻んだル・マン・レーサーの復刻版。ビッザリーニというブランド名の権利を保有する人たちによって、ほぼオリジナルへ忠実に再現されている。歴史と血統を、正当に受け継いだクルマといえるだろう。

予定されている生産数は24台。オプションなどを含めない状態で、英国価格は165万ポンド(約2億6400万円)とのこと。試乗することができたのは、そのプロトタイプとなる第1号車だ。

ビッザリーニ5300 GT リバイバル(欧州仕様)
ビッザリーニ5300 GT リバイバル(欧州仕様)

クルマに詳しいAUTOCARの読者でも、ビッザリーニという自動車会社には聞き覚えがないかもしれない。過去を遡って調べてみても、得られる情報は限られている。

歴史のどこかの歯車が違っていれば、フェラーリやランボルギーニと並ぶ、イタリアン・エキゾチックになっていた可能性もある。この復刻された5300 GTを知るには、少々その起源を振り返っておいた方が良いだろう。

創業者のジオット・ビッツァリーニ氏は、スポーツカーの世界では外すことができないであろう、重要な人物だった。フェラーリ250 SWBを開発したチーフエンジニアであり、250 GTOの設計を主導した経験を持っていた。

V型12気筒エンジンの技術者として、ランボルギーニにも深く関わった。1963年の350 GTVから2010年のムルシエラゴまで、彼の手掛けたユニットが動力源になっていた。

1965年のル・マンでクラス優勝

1960年代半ば、彼はイタリアの自動車メーカー、イソ社を創業したレンツォ・リボルタ氏と協働で、ゴージャスなグランドツアラーのグリフォA3/Lを設計。レーシング・スポーツカーのA3/Cへと発展させた。

このグリフォA3/Cは、1965年のル・マン24時間レースに参戦。クラス優勝を果たすという、大成功を納めた。

ビッザリーニ5300 GT リバイバル(欧州仕様)
ビッザリーニ5300 GT リバイバル(欧州仕様)

参戦時点では、マシンはイソというブランド名を背負っていた。しかし、程なく2人の関係には亀裂が入り、ビッザリーニは独自にブランドを立ち上げ、5300 GTというモデルへ発展させている。

試乗したビッザリーニ5300 GT リバイバルは、グリフォA3/Cとしてル・マンを戦ったマシンに限りなく近づけてある。製造を担当したのは、英国の技術者集団、RML社だ。公道走行が可能なように型式認証も済ませており、ブランド名も復活することになった。

見事に再現されたル・マン・レーサーへ近づいてみる。その素晴らしさに、なぜ多くの人から忘れられてしまったのか疑問が湧いてくる。

赤く塗られた低いボディのフロント部分、シャシーの中央寄りに5.3Lのシボレー社製V型8気筒エンジンが搭載されている。エンジンルームの前側には、もう1基エンジンが載りそうな空間がある。

1965年当時も、400ps以上の最高出力が得られていた。サスペンションは四輪ともに独立懸架式。フェラーリGTOやシェルビー・デイトナ・コブラより、優れた足まわりだったといっていい。

記事に関わった人々

  • 執筆

    アンドリュー・フランケル

    Andrew Frankel

    英国編集部シニア・エディター
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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