1965年のル・マン・レーサーを復刻 ビッザリーニ5300 GT リバイバルへ試乗 限定24台
公開 : 2022.04.21 08:25
911 GT3と同等のパワーウエイトレシオ
パワフルで軽量で、重心位置は低い。ボディは滑らかで、いかにも空気をスムーズに流しそうだ。世界中の関心を集めてもおかしくないパッケージングといえた。フェラーリやフォードと同じくらいの事業予算があれば。
ビッザリーニは多くのクルマのデザインを手掛けていたにも関わらず、自身のクルマを成功裏に終わらせることはできなかった。1969年、事業は停止してしまった。
そうだとしても、ビッザリーニ5300 GTはイタリアン・デザインとアメリカン・メカニズムとが融合した、素晴らしいマリアージュにある。大排気量のV8エンジンを搭載していながら、車重は1200kgを切っている。
パワーウエイトレシオは、最新のポルシェ911 GT3に引けを取らない。つまり、非常に速い。
オリジナルへの忠実さにも抜かりはない。公式にFIAのヒストリック・レースのレギュレーションをクリアするために必要なことは、ボディをカーボンファイバー製からグラスファイバー製へ置き換えることくらいだ。技術力の高いRML社なら、可能だろう。
着座位置は低い。背もたれの倒れたシートは、シャシー中央よりだいぶ後ろ側。主要なメーターは、ダッシュボードの助手席側に並んでいる。
シボレー社製のエンジンは、1965年と同じように、4基のウェーバー・キャブレターで息を吸う。いかにもなアメリカンサウンドが、イタリアンな美しいボディを包み込む。ジャニス・ジョプリンがパフォーマンスしているようだ。
最新技術が活かされた製造品質
アクセルペダルを倒すと、猛烈に加速を始める。挙動の予想は若干難しい。ボルグワーナー社製の4速MTは、まだプロトタイプだからか少しぎこちない。しかし、シャシーは見事に機能している。
この時代のパワフルなFRモデルは、盛大にリアタイヤが滑ることが珍しくない。それはそれで楽しいのだが、ビッザリーニ5300 GTはそこまでだらしなくはない。
コーナーへ侵入していくと、アンダーステアが抑え込まれていることに気付く。シャシーの反応はニュートラル。出口に向かって右足へ力を込めると、息を呑むほど強力なトラクションで応えてくれる。
パワフルなエンジンと、最新技術が活かされた素晴らしい製造品質とが折り重なり、ドライバーの欲求を刺激してくる。現代のレーシングカーを数多く手掛けてきたRML社だからこそ、といえる仕上がりだと思う。
現代に蘇ったビッザリーニ社の担当者は、5300 GTはこれから登場するであろうモデルの、1例に過ぎないと話していた。どんなクルマが復活するのか、楽しみでならない。
1960年代の、最も優れたロードカーでありレーシングカーの1台を忠実になぞった、ビッザリーニ5300 GT リバイバル。ブランドのリスタートは、完璧に切られたといえそうだ。