フィアット500e話題 開発担当者にきく 今風「ルパンのクルマ」の使命 

公開 : 2022.04.12 05:45

ほとんどすべてが新設計

こうした欧州を基点とするBEVシフトの大波が日本市場にも押し寄せている。
     
日系メーカー各社、ドイツ勢、フランス勢、さらには伏兵として韓国ヒョンデ(現代)も日本市場にBEVを本格導入する。

そうなると重要なことは、商品の差別化だ。

新型500eは、電動コンポーネンツで先代と共有するのは全体の4%にとどまるという
新型500eは、電動コンポーネンツで先代と共有するのは全体の4%にとどまるという

新型500eには、先進技術とファッション性がほど良くブレンドされている点が、メディアやユーザーの注目を浴びている理由であろう。

さて、フィアット本社関係者とのオンライン意見交換に話を戻すと、「先代500eとの技術的、また開発方針に対する違い」に関する質問があった。

フィアット側では先代を「500カリフォルニア」と呼ぶ。米カリフォルニア州の環境規制であるZEV(ゼロエミッションヴィークル)規制法への対応が、導入の主な理由だったからだ。

当時の米クライスラーが2010年1月、北米自動車ショーでコンセプトモデル「500EV」を発表。

そもそも、2000年代にクライスラーはBEVプロジェクト「ENVI」があり、500EVもその流れを汲むはずだった。

その後、搭載する電池メーカーの選択などで修正などがある中、500の車体を活用するかたちでのBEV化となった。

一方、新型500eでは「車体は先代とはまったく別物。電動コンポーネンツで先代と共有するのは全体の4%にとどまる」という、新設計である。

フィアットらしいモノづくり

バッテリーパックは24kWhから42kWhへとほぼ2倍の電気容量になった。

「新しい車体における運動特性を十分に考慮し、パック全体としてコンパクトな設計とした」という。

フィアット500e
フィアット500e

冷却方法は液体を使うが「外気温があまり高くない春の時期などでは、冷却用のバルブを閉じて、冷却溶剤はモーターや制御系部品向けに集約される」という特長を紹介した。

搭載する電池セルの種類やサプライヤーについては未公開だったが、体積あたりのエネルギー密度、または質量あたりのエネルギー密度ともに先代500eと比べて大きく向上していることをデータで示した。

電池パックの補償期間については「8年間、または走行距離16万km(10万マイル)としており、その場合の電池パック全体としての劣化は30%程度(70%残)を想定している」という。

また、ドライビングモードについて「スポーツモードがないのは、500eの商品性を考慮した結果。また、シェルパモードというネーミングはマーケティング的な要因が大きい」と説明した。

シェルパモードは、電池残量が少なくなった場合、最高速度を80km/hに制限し、エアコンやヒーターを自動的にオフして電池消耗を実現する。

リースやサブスクリプションモデルでの販売を強化する新型500e。日本でのBEV普及に大きな役割を果たしてくれそうだ。

記事に関わった人々

  • 執筆

    桃田健史

    Kenji Momota

    過去40数年間の飛行機移動距離はざっと世界150周。量産車の企画/開発/実験/マーケティングなど様々な実務を経験。モータースポーツ領域でもアメリカを拠点に長年活動。昔は愛車のフルサイズピックトラックで1日1600㎞移動は当たり前だったが最近は長距離だと腰が痛く……。将来は80年代に取得した双発飛行機免許使って「空飛ぶクルマ」で移動?

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