時代の最高速モデル 2000年代 ブガッティ・ヴェイロン 16.4 W16気筒で407.1km/h
公開 : 2022.04.30 07:05
大きなゴルフのように運転できる
筆者は今回の企画まで、ブガッティ・ヴェイロンを運転したことがなかった。ズングリとしたスタイリングから、400km/hオーバーだけを目指した直線番長的なクルマだとイメージしていた。だが、それは大きな間違いだった。
内包している冷却システムと、立ち向かうべき空気の壁を考えれば、ヴェイロンのスタイリングは驚くほどシンプル。ドアを開き、精巧に仕立てられたインテリアに身を置くと、コンベンショナルな運転環境にもう一度驚く。
豪華なステアリングホイールの奥には、一般的なメーターが5枚並んだパネルが据えられている。センターコンソールは、マシンターン加工の美しいアルミパネルで飾られているが、エアコンの操作系などは使い慣れたデザインに準じている。
パネルは滑らかにカーブを描き、手前側に7速デュアルクラッチATのシフトレバーが立つ。それ以外、見慣れないスイッチなどはほぼない。
今回は340km/h以上の速度域まで出すことが許される、魔法の2本目のキーは預かれなかった。それでも、ヴェイロンを快く貸し出してくれたジョンティ・コリアー氏は、その速度以下なら能力を探求して構わないという。ありがたい。
彼が寛大な理由は、発進させてすぐに理解できた。スタートボタンを押し、豪華なシフトレバーでドライブを選択する。優しくアクセルペダルを倒す限り、大きなフォルクスワーゲン・ゴルフのように運転できる。
機敏に身をこなし、エスプリのように走る
更に右足へ力を込めると、大きく成長し洗練された、ロータス・エスプリのように走る。ステアリングホイールは情報量が豊か。機敏に身をこなし、コーナリングは反応が良い。
ヴェイロンを持ち込んだサーキットを2周ほど回る。コリアーは、4基のターボをまだ使っていないだろうと説明する。もっと速く走れるという。
彼の言葉を聞いて、よりペースを速めようと攻め立てる。しかし、筆者が40年ほど積んできたドライビング・スキル程度では、すべてを解き放つことは難しかった。
運転席で聞くヴェイロンは、4基のターボが圧力を高め始めると、ジェット旅客機のボーイング747のように唸る。短いターボラグをおいて、1888kgの質量を打ち破るように、巨大なトルクが湧き出てくる。
短いストレートで加速を試みると、あっという間に自殺行為的な速度へ加速する。ブレーキペダルへ力を込めれば、リアウイングが立ち上がりエアブレーキとして働く様子がバックミラー越しに見える。まだ死ぬのは早い。
ブガッティ・ヴェイロンを試すのに、これより長いストレートを筆者はいらない。その片鱗だけでも、疑いようのない速さだった。
協力:トム・ハートリー・ジュニア社
ブガッティ・ヴェイロン 16.4(2005〜2011年/欧州仕様)のスペック
英国価格:92万5000ポンド(2005年時)/150万ポンド(約2億4000万円)以下(現在)
生産台数:252台
最高速度:407.1km/h
0-97km/h加速:2.5秒
車両重量:1888kg
パワートレイン:W型16気筒7993ccクワッド・ターボチャージャー
使用燃料:ガソリン
最高出力:1001ps/4200rpm
最大トルク:127.2kg-m/2200rpm
ギアボックス:7速デュアルクラッチ・オートマティック