広大な砂漠をEVで横断してみた 食用油で急速充電 オーストラリア・アウトバック攻略

公開 : 2022.04.16 06:05

インフラ整備で観光客増加に期待

エドワーズは、食用油をろ紙に通して発電機に注ぎながら、「1台充電するには、20Lの廃食用油が必要です」と説明してくれた。発電機に火を入れ、今回取材班がアウトバック横断に使用したポールスター2にプラグをつなぐ。

ポールスターに寄りかかりながら、充電メーターが上がるのを誇らしげに見つめるエドワーズは、「このユニットはオーストラリア、ひいては世界で最も人里離れた場所にあるEV急速充電ステーションの1つと言えるでしょう」と話す。フル充電すれば、1~2回の停車で1000km先の都市パースまで行けるはずだ。

カイグナのロードハウスに設置された、バイオマス発電による急速充電器
カイグナのロードハウスに設置された、バイオマス発電による急速充電器

かつて懐疑的だったパイクは、一躍脚光を浴びるようになった。TV局やパースの主要新聞がこの発電機について報道し、取材を受けた彼はちょっとした有名人になったのだ。

「EVを持つ人がどれだけ増えていくのか、とても楽しみです。二酸化炭素排出量削減に向けた大きな一歩だと思います」と彼は言う。

食用油を燃やして発電することは完全なゼロ・エミッションではなく、太陽光発電の費用対効果が高まれば最善策とは言えなくなる。しかし、すでに現場にある燃料を利用でき、埋立地の削減にもつながる。

EV評論家として知られるロジャー・アトキンスは、太陽光発電の費用対効果が判明するまで、この取り組みを支持する意向を示している。「偉大なものが良いものを邪魔しないようにすることが重要です。地元で手に入り、効率的なものは何でも使うことを支持します」

この道は、オーストラリアのロックバンドAC/DCが初期の頃に何度も通った道で、最も有名な曲「Highway to Hell」のインスピレーションの源となったようだ。充電インフラが整うことで、彼らのバンド名にふさわしい道となるだろう。しかし、問題は、実際に人がやってくるかどうかだ。

「過去5年間、ナラボーを通過したEVの平均台数は5台です」とエドワード氏は言う。「急速充電が可能だということが伝われば、年間20台、40台、100台と増えていくでしょう」

EVでナラボーを通過するのに3か月近くもかからなくなる。これは間違いなく進歩である。

記事に関わった人々

  • 執筆

    AUTOCAR UK

    Autocar UK

    世界最古の自動車雑誌「Autocar」(1895年創刊)の英国版。
  • 翻訳

    林汰久也

    Takuya Hayashi

    1992年生まれ。幼少期から乗り物好き。不動産営業や記事制作代行といった職を経て、フリーランスとして記事を書くことに。2台のバイクとちょっとした模型、おもちゃ、ぬいぐるみに囲まれて生活している。出掛けるときに本は手放せず、毎日ゲームをしないと寝付きが悪い。イチゴ、トマト、イクラなど赤色の食べ物が大好物。仕事では「誰も傷つけない」「同年代のクルマ好きを増やす」をモットーにしている。

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