レギュラーとハイオクの違いとは 「出力が上がる」は間違い? オクタン価の差を解説

公開 : 2022.04.13 06:25

レギュラーガソリンとハイオク(無鉛プレミアム)の違いを解説。価格の高い方が良いというわけではありません。

オクタン価の違いは異常燃焼の起こりにくさ

ガソリンスタンドに行くと、2種類のガソリンが売られている。安価な「レギュラー」と高価な「ハイオク(無鉛プレミアム)」だ。さて、あなたはどちらを選ぶだろうか?何となく良さそうという理由でハイオクを手に取るか、それとも倹約してレギュラーで我慢するか。

この2種類の最も大きな違いは、ガソリンのオクタン価(RON)である。オクタン価は、ノッキングやピンキングと呼ばれるデトネーション(異常燃焼)の起こりにくさを示している。数値が高いほどデトネーションへの耐性が高い(起こりにくい)ということになる。

オクタン価の高い燃料では、ノッキングが起こりにくい。
オクタン価の高い燃料では、ノッキングが起こりにくい。

ガソリンエンジンでは、ガソリンは空気と混合され、圧縮されて火花で点火する。このとき、混合気は野火のように点火点から外に向かって燃えていく。燃焼はスムーズになるよう制御されているが、混合気が圧縮されすぎると、早いタイミングで自然発火してしまう。これがデトネーションで、乾燥豆をブリキ缶に流し込むような音、あるいはディーゼルのようなノッキング音として聞こえてくる。

ガソリンエンジンの性能を上げるには、圧縮比を上げるか、ターボチャージャー付きのエンジンではブースト圧を上げることが重要である。どちらも、燃料が点火したときの燃焼室内の圧力を高めるものだ。

旧式のエンジンでは、デトネーションが起こらないよう設計者やチューナーが慎重に制御しなければならなかった。1982年、「ミスター・ターボ」の異名を持つサーブの天才エンジニア、ペール・ジルブラントは、オートマチック・パフォーマンス・コントロール(APC)を考案する。APCは、シリンダーブロックに取り付けたノックセンサーと呼ばれるマイクでブースト圧とエンジン回転数を監視し、ノッキングの発生を感知する。

現在のガソリンエンジンにも同様のアンチノックシステムが搭載されているが、エンジン制御コンピュータが高性能化したことで、アルゴリズムを用いてノッキングの発生を予測することができるようになった。自然吸気エンジンでは、ノッキングの恐れがある場合、燃焼が開始されるタイミングを遅らせる(点火を遅らせる)。

さて、こうした対策が行われているにも関わらず、余計にお金を払ってハイオクを購入する必要性が果たしてあるのだろうか。

レギュラーとハイオクを入れ間違えるとどうなる?

どちらを選ぶべきかは、クルマの取扱説明書や給油口に明記されている。例えば、オクタン価の規定が日本と異なる欧州車の場合、ハイオク(無鉛プレミアム)を使用するようはっきりと書かれているのだ。一般的な国産車などに必要以上にオクタン価の高い燃料を使っても、エンジンは傷つかないが、明確なメリットがあるわけでもない。むしろ財布が傷つくことになる。

日本工業規格(JIS)では、オクタン価はレギュラーが89以上、ハイオクが96以上と定められている。その差は7ポイントだが、最新のエンジンであれば、ハイオク仕様でもレギュラーガソリンを入れたところで「すぐに故障」とはならない。しかし、サーキット走行なども視野に入れた高性能エンジンの場合、メーカーは開発時に入手可能な最高オクタン価で設計した可能性が高い。

高性能エンジンは、燃料のグレードを間違えると、うまく動作しなくなる。
高性能エンジンは、燃料のグレードを間違えると、うまく動作しなくなる。

オクタン価が高いほど、エンジンのブースト圧は高く設定される。一方、オクタン価の低いエンジンでは、ノッキングを起こさないよう、少し控えめに設定されることがある。しかし、その違いを感じられるかどうかは、ドライバーとクルマとの相性次第だ。

ちなみに、デトネーションが極端に進むと、エンジンに大きなダメージを与えることがある。高度にチューニングされた競技用エンジンのシリンダーヘッドは、まるでネズミにかじられたような状態になる。しかし、市販車でこのようなことが起こる可能性は低い。

もし、間違えてハイオク仕様にレギュラーガソリンを入れても焦る必要はないが、そのまま長期間に渡って使用を続けると不具合の原因となりかねない。乗っているクルマの指定ガソリンをよく確認した上でガソリンスタンドに行こう。

記事に関わった人々

  • 執筆

    AUTOCAR UK

    Autocar UK

    世界最古の自動車雑誌「Autocar」(1895年創刊)の英国版。
  • 翻訳

    林汰久也

    Takuya Hayashi

    1992年生まれ。幼少期から乗り物好き。不動産営業や記事制作代行といった職を経て、フリーランスとして記事を書くことに。2台のバイクとちょっとした模型、おもちゃ、ぬいぐるみに囲まれて生活している。出掛けるときに本は手放せず、毎日ゲームをしないと寝付きが悪い。イチゴ、トマト、イクラなど赤色の食べ物が大好物。仕事では「誰も傷つけない」「同年代のクルマ好きを増やす」をモットーにしている。

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