FRの2シリーズ登場を喜ぶ BMW M240i x ポルシェ718ケイマン x AMG CLA 45 3台乗り比べ 後編
公開 : 2022.04.23 09:47
BMW 2シリーズのクーペが、FRをキープし一新。競合モデルとの比較で、英国編集部がお互いの魅力を探ります。
勢いを維持する走りこそケイマンの喜び
ポルシェ718ケイマンのパワーステアリングはアシストが弱く、ダイレクト感も若干低い。しかし、感触と重み付けはリアル。50km/hも出せば、操舵感は夢見心地だ。シャシーの精巧さが現れる速度域へ迫ると徐々に重さが増し、印象は一層良くなっていく。
不足ないパワーを得るには、高い回転数を保つ必要がある。だが、その勢いを維持しながら走らせることこそ、718ケイマンの喜びでもある。
フロントノーズの向きが僅かに変化するだけでも、サスペンションへ掛かる負荷の推移を感じ取れる。巧みなクッション性を備えつつ、1度か2度、ささやかにボディがロールする。とても品がいい。
コーナーの曲率などに関わらず、アウト側の2本のタイヤが公平に荷重を受け持つ。最初にフロント側へ負荷が掛かり、それからリアへシフトしていくBMW M240i xドライブ・クーペとは好対照。718ケイマンは、とてつもなく直感的だ。
BMWもクルマとの意思疎通がしやすく、偽りがない。しかし、ボディがひと回り大きく重いことを、雨の下り坂でジワジワと感じる。右側には白線が迫り、左側には水の溜まった路肩が近い。自然と、少し早めに速度を絞っている。
筆者はポルシェ911 ターボより、ベーシックな718ケイマンこそ、チャレンジングな雨の郊外の道を楽しむ究極のモデルだと思う。より小さく有機的で、挙動がクリア。望み通りのスポーツクーペだ。
926ポンド(約15万円)の、トルクベクタリング機能付きリミテッドスリップ・デフがあれば完璧。今回の718ケイマンには、しっかり備わっていた。
AMGの技術力が集結したCLA 45S
まるで身体の延長のように、極僅かな入力のやり取りが面白い。初めて旋回するカーブでも、入り口でステアリングホイールの角度を決めれば、その後に切り増しする必要もない。ポルシェ以外のモデルでは、同じ体験は難しい。
そして、それと明らかに味わいが違うのが、メルセデスAMG CLA 45S 4マティック+ クーペ。分厚いビーフステーキに、ニンニクがたっぷり掛かったようなクルマだ。
ドアを開くと、スーパーカー級のバケットシートが高い位置に並んでいる。ハッチバックが起源であることを匂わせるように、フロントガラスが近い。
フロントには、 M139型と呼ばれる2.0L直列4気筒エンジンが載り、ターボの位置は後方。インテークマニホールドが前方にレイアウトされ、効果的に吸気を冷やし、ターボラグを減らしている。最高出力は、2台を圧倒する422psだ。
メルセデスAMGの技術力が集結している。コーナーでの姿勢制御は、息を呑むほどにフラット。軽快で鋭く反応するステアリングと、ワイルドな加速力。安全性を担保しながら、リアタイヤを思い切り振り回すことすら受け入れてくれる。
M240i xドライブの、グランドツアラー的フィーリングとは異なる。718ケイマンの、ドライバーと一体のような巧みなハンドリングも得てはいない。圧倒的に鮮烈で、ナンセンスさすら感じてしまう。それが魅力でもあるのだが。