フォード・トルネオ・コネクト1.0エコブースト・ゼテック

公開 : 2014.06.21 23:40  更新 : 2017.05.29 18:54

■どんなクルマ?

フォード製のエントリー・レベルに位置するエンジンを搭載するフォード・トルネオという名前のユーティリティMPVをテストする。この手のクルマに全く興味がないという読者もいるかもしれないが、ワンボックスのような形をしたフォードを、ここ最近英国では頻繁に目にするようになった。それら全ては新しくデビューしたばかりのフォード・トランジットに酷似してるのだが、これは偶然の一致ではない。というのも、フォード製商用バンのトランジット・ファミリーは、ピラミッドの底辺に位置するフィエスタとベースを同じくするトランジット クーリエから、トップ・モデルのフルサイズ版となるトランジット ジャンボに至るまでのルックスの統一化が図られている最中だからだ。

トランジット クーリエとトランジット ジャンボの間にはコネクトとカスタムと名付けられた ’トルネオ’ ブランドの乗用車が存在し、こちらの決して大きくない2台に我々は興味津々なのである。ここにきて、ライバルにあたるフィアットドブロシトロエン・ベルリンゴに対し、5枚のドアと堂々たる7座席を備えるトルネオ・コネクトが、フォードの ’グローバル-C’ プラット・フォームとともに真向勝負を挑むという戦力図ができあがったのである。

標準の5シーター・モデルでさえも、ミニバンであるフォードS-マックスよりも圧倒的な実用性を誇り、車両本体価格はフォードB-マックスに近い設定となる。

■どんな感じ?

横長で、カクカクとしたコネクトは言うまでもなく莫大な室内空間を確保する。パッセンジャー・ルームは大型高級サルーンのもつ容量と肩を並べる上に、頭上のクリアランスはサルーンのそれを遙かに凌ぐ。両側に用意されたスライド・ドアは狭いスペースでも非常に楽に乗り降りができるし、フロントの助手席を倒せばさらにに大きな荷物を積むことだってできるのだ。

後部座席を前後にスライドできないことだけは期待外れではあったものの、それらのシートは折りたたむことができるので、こちらもまた大きな荷物を容易に積むことに大きく貢献する。仮に全てのシートを折りたためば2410ℓの荷室容量が確保され、乗用車というよりもバイクや犬、家具などを何も気にすることなく積み込むことができるため、どちらかと言うと貨物車に近いと感じられる。

もちろんこれほどの実用性やバリューに優れるのだから、決して高レベルとは言い難いクオリティや洗練度合いにはある程度目を瞑らなければならない。正直に記すとするならば、特にクオリティに関しては予め心の準備をしておく必要があるし、あなたが望む望まないに関係なく、バンの様なルックスから脱することは不可能だ。

キャビンに目を向けると、用いられる素材は強靭で機能的であるがゆえに満足できる仕上がりだと言える。パネルのフィッティングやスイッチに関してはプラスティック特有の安っぽさがあるが、決してチープというわけではなく、多くの乗用車のそれに比べると幾分安っぽいといった所だ。とは言うものの、やはりライバルのドブロやベルリンゴの方が品良く仕立てられているのは否定しがたい事実である。

走らせてみれば、大部分のシチュエーションにおいて満足することができる。バンプを乗り越える時には少々硬い印象は拭えないし、極めて凹凸の激しい路面では上下に跳ねる傾向はあるが、それなりの量の荷物を積み込めばそれらのネガティブな部分は気にならなくなるはずだ。

それ以外は非常に洗練されおり、ハンドリングに至っては程よい重さと率直さがあり、そのフィーリングもいかなる場合においても安定感があるため、その出来は完璧に近いといっても過言ではない。その上、速度が乗った状況でコーナーに突入したとしても、ボディは容易にコントロールができる。またグリップ・レベルも極めて高くバランスが良いために、運転していて退屈に感じたりすることはなく、総合的に見てフォードのモダンな乗用車に引けを取ることはない。

1.0ℓのエコブースト・エンジンとの相性も決して悪くはない。タービンから生じる音も予想以上に静かであったし、どの回転域でも柔軟性がある。ただし、荷物を目一杯積み込んだ場合や、坂道、お急ぎの時など6速すべてを使い切るような場合には、あともう少しだけ低速トルクが大きければいいのになと思うことはあるはずだ。

ただしそう感じるのは極々稀な状況のみであるから、あまり心配する必要はないだろう。大部分において、エコブースト・エンジンは不思議なほどに活気があり、マナーもよく、複合サイクル燃費もまた良好だ。

■「買い」か?

こればかりは、あなた自身が商用バンをお探しかどうかによって左右されるだろう。とくにこのクルマの場合、正直に言って他のライバル勢の中で一番かっこ悪い。これらの事実をあなたが受け入れることができるならば、そしてこのクルマに資金を迷わずに投じるでき、また使用するに値するシチュエーションがあるならば、われわれはあなたを引き止めることはないだろう。

(マット・ソーンダース)

フォード・トルネオ・コネクト1.0エコブースト・ゼテック

価格 £15,895(276万円)
最高速度 166km/h
0-100km/h加速 14.0秒
燃費 17.8km/ℓ
CO2排出量 129g/km
乾燥重量 1429kg
エンジン 直列3気筒999ccターボ
最高出力 100ps/6000rpm
最大トルク 17.4kg-m/4100rpm
ギアボックス 6速マニュアル

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