メルセデス・ベンツSクラス 詳細データテスト 最良ではない快適性 走りはスポーティではないが上々

公開 : 2022.04.16 20:25  更新 : 2022.04.26 01:45

結論 ★★★★★★★★★☆

もしもメルセデスの狙いが、デジタル化を進めて、Sクラスを新たな時代に進ませることにあったなら、新型のW223世代は成功だとみていい。

キャビンは安心できるくらいトラディッショナルでありながらアヴァンギャルドでもあり、大画面ディスプレイの範囲は他メーカーに見られるような気に触る偏りを生まないよう設られている。

結論:抜きん出たライバルがいない世代にあっては、このプラグイン仕様のSクラスがベストだ。
結論:抜きん出たライバルがいない世代にあっては、このプラグイン仕様のSクラスがベストだ。    MAX EDLESTON

アンビエントライトとコネクティビティは非常にうまくできている。エルゴノミクス面でいくつか手落ちはあるけれど、ドライバーも同乗者も、長距離をもっとも快適にくつろいで過ごせるクルマのひとつに数えられる。

いまやバカげたくらい大げさなグリルが幅を効かせる状況において見れば、Sクラスのエクステリアは比較的緻密だ。欧州車の中でも、いい意味で際立つに違いない。

とはいうものの、根本的に進歩は足踏みをしているように感じられる。S580eのプラグインハイブリッド・パワートレインは、効率とバーサタイル性でクラスの新たな基準を打ち立てたが、キャビンの静粛性や乗り心地は従来を超えるものではない。

Sクラスがロールスロイスに挑んできた路上でのマナーという点においては、今や明らかな差がついてしまった。また、来るべき新型7シリーズは、シュツットガルトの頭痛の種となるに違いない。

新型Sクラスは、すばらしく贅沢な乗り物ではある。しかし、もはや息を呑むほどではない。

担当テスターのアドバイス

リチャード・レーン

新型SクラスのADASを詳細に説明した長いビデオを観たのだが、疑いなくこれはすばらしく包括的で、効果的で、人命を救ってくれる性能を備えたものだ。しかし、病的なほど突き詰められているわけではない。緊急ブレーキが、重要とは思えない場面で作動して、リラックスムードが台無しになることが何度かあった。

マット・ソーンダース

驚いたのは、アンビエントライトが気分に影響したことだ。適切に使えば、あっという間に穏やかさが倍増するのだ。

オプション追加のアドバイス

最大の疑問は、ホイールベースの長短いずれにするべきか、だ。というのも、それによってPHEVや上級レベルの装備パッケージを選べるかどうかが変わってくるから。もっとも、日常使いするなら、19インチホイールを履くエントリーレベルのショートボディもなかなかいいクルマだ。

改善してほしいポイント

・停止する際のシフトダウンをスムースにしてほしい。現状、ギアボックスがギクシャクすることがある。
・ADASをもっと巧みに起動するようにしてもらいたい。過敏すぎるように感じることがある。
・遮音性や乗り心地は、今後も磨き続けてほしい。Sクラスは、その点が驚くほどいいものでなくてはならない。

記事に関わった人々

  • 執筆

    リチャード・レーン

    Richard Lane

    英国編集部ライター
  • 執筆

    マット・ソーンダース

    Matt Saunders

    英国編集部ロードテスト・エディター
  • 撮影

    マックス・エドレストン

    Max Edleston

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    関耕一郎

    Kouichiro Seki

    1975年生まれ。20世紀末から自動車誌編集に携わり「AUTOCAR JAPAN」にも参加。その後はスポーツ/サブカルチャー/グルメ/美容など節操なく執筆や編集を経験するも結局は自動車ライターに落ち着く。目下の悩みは、折り込みチラシやファミレスのメニューにも無意識で誤植を探してしまう職業病。至福の空間は、いいクルマの運転席と台所と釣り場。

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