航続距離1000kmの近未来 メルセデス・ベンツ・ビジョンEQXX 試作車へ試乗 後編
公開 : 2022.04.24 08:26 更新 : 2022.08.08 07:12
メルセデス最新の純EVサルーン・コンセプトへ英国編集部が同乗。クルマの近未来像を体験しました。
100kWhのバッテリーに190psのモーター
メルセデス・ベンツ・ビジョンEQXXがベースとしているのは、独自に開発された後輪駆動用プラットフォーム。2024年以降の市販車に採用される、MMAプラットフォームの一部も取り入れられているという。
フロアパンに敷き詰められるリチウムイオン・バッテリーの容量は、約100kWh。重量は495kgもある。中国のCATL社製で、最新のCTPシリコン技術を導入し、システム電圧は900Vとのこと。
駆動用モーターは、ドイツと英国に拠点があるメルセデス・ベンツの技術部門によって開発された。リアアクスル側に搭載され、190psを発揮する。
ボディは低くタイトだが、4枚のドアは大きく開き、ビジョンEQXXへの乗り降りは簡単。サポート性は最小限ながら、クションの効いたシートの取り付け位置はかなり低い。フロアは完全なフラットだ。
シートに腰を下ろすと、スポーティな雰囲気を感じる。傾斜したフロントガラス越しの視界は良好。一方で後方視界はゼロだ。リアウインドウがあるべき位置に、ソーラーパネルが並んでいる。補機用の12Vバッテリーを充電するために。
ダッシュボードの取り付け位置は低く、幅1100mmもある8Kの大型モニターが広がる。メーターの表示に加えて、消費電力量などもリアルタイムで表示が可能だ。
マルチファンクション・ステアリングホイールを握ると、傾斜したフロントガラスの上部が頭上に迫る。それ以外、レザーで仕立てられたインテリアの印象は、かなり良い。
ワンオフながら感銘を受ける洗練性
だが、今回は運転が許されていない。実際にビジョンEQXXを走らせるのは、このプロジェクトでチーフエンジニアを務めた1人、フリーデマン・フラッシュ氏。フランス・ニースまでのテスト走行でも、ステアリングホイールを握った1人だ。
「とても運転しやすいと思います。効率を高めるのに、特別なドライビング・スタイルも必要ありません。ただし、最大の航続距離を得るには、かなり予測的に運転する必要はありますね」。と、フラッシュが話す。
筆者は助手席に座り、ニースの公道を進む。先進的なドライブトレインの滑らかさと、全体的な洗練度の高さに感銘を受けながら。
1台だけ作られるような、ワンオフの技術的なコンセプトカーで、ここまで高次元に完成されていることは珍しい。混雑した市街地にも、流れの良い幹線道路へも、まったく問題なく適応している。
高速道路へ入ったところで、フラッシュはタッチモニターに触れ、リアディフューザーを展開した。空力特性を良くするために。
運転しながら、彼は消費電力に目を配る。「100km当たり10kWhから15kWh(6.7-10.0km/kWh)の間が、スイートスポットです。できるだけ、それを保ちたいところです」。と教えてくれた。
回生ブレーキの効きは4段階が用意され、ステアリングホイールのパドルで切り替えられる。通常のビジョンEQXXは、アクセルペダルを緩めると急速に速度が落ちるようだ。