兄弟エンジンの軽量スポーツ RRのアルピーヌA310 x MRのロータス・ヨーロッパ 前編
公開 : 2022.05.08 07:05
ビッグバルブにピンストライプのボディ
英国仕様の右ハンドル車が登場したのは、1969年に更新されたヨーロッパ・シリーズ2になってから。車内の防音性が高められ、パワーウインドウ化され、シートの前後スライドも可能になった。ベンチレーションも改善されている。
熟成を重ねた109ps仕様のヨーロッパ・ツインカムは、1971年の発売。リアデッキ左右に立ち上がった、フライング・バットレス部分が低く削られ、見た目でも識別しやすい。
車内にも改良を受け、足先を伸ばせる空間が与えられた。ずっと居住性は良くなっている。
そして、127psを発揮するビッグバルブ・エンジンを搭載した、ヨーロッパ・スペシャルの登場は1972年。1975年まで生産が続いた、ロータス・ヨーロッパのトリを努めた。
ゴールドのピンストライプが入ったボディに、シルバーメタル・フレークのサイドシルというツートーンの組み合わせは、多くの人の記憶に残っているはず。ダンロップのアルミホイールで、シックに決めたロータスだ。
ブラックのボディにゴールドのピンストライプで仕立てられた、JPS(ジョンプレイヤー・スペシャル)仕様も当初100台限定で登場。想像以上に多くの支持を獲得し、最終的にはモデル末期まで購入することができた。
今回ご登場願ったカーニバル・レッドに塗られたクルマは、記録では最後に製造されたヨーロッパ・スペシャル。ロータスで長年セールス・ディレクターを務めた、ロジャー・パットナム氏が初代オーナーだったという。今は、見事にレストアされている。
A110からグランドツアラーへ振ったA310
他方、同じ頃のフランスにはリアエンジンのスポーツカーが存在した。アルピーヌ・ルノーA310だ。ロータスは1970年代初頭までにF1で名声を掴んでいたが、アルピーヌはラリー界で圧倒的な強さを誇った。
鮮やかなブルーに塗られた初代A110は、世界ラリー選手権(WRC)の前身に当たる、1971年の国際マニュファクチャラーズ選手権(ICM)で優勝。さらにWRCとなった1973年にも、優勝している。モンテカルロ・ラリーでの勝利を含めて。
好戦的なA110の後継モデルとしてフランスの技術者が考案したのが、グランドツアラー寄りのA310だった。それでも、バックボーン・シャシーにリアエンジンという基本的なパッケージングは踏襲された。
ボディは、ワンピース成形のグラスファイバー製。主要コンポーネントは、ルノーの量産モデルから流用されている。
さかのぼること1955年、ルノーのディーラーを営んでいたジャン・レデレ氏によって設立されたのが、アルピーヌ社。1971年にA310を発表した時点でも、独立した自動車メーカーだった。
しかし、年間666台という好調の波に乗っていた1973年にルノーが買収。アルピーヌ・ルノーへ改組されている。
長く生産されたA310シリーズが積むエンジンは、プジョーとルノー、ボルボの共同によるPRV社のV6ユニットだけではない。1971年から1976年にかけて生産された1600VEと呼ばれる初期型には、ゴルディーニ・チューニングの直列4気筒が載っている。
オールアルミのブロックにクロスフローのヘッドが組まれ、実はロータス・ヨーロッパのエンジンとも縁が深い。一緒に載る5速MTも。
この続きは後編にて。