兄弟エンジンの軽量スポーツ RRのアルピーヌA310 x MRのロータス・ヨーロッパ 後編
公開 : 2022.05.08 07:06 更新 : 2022.08.08 07:11
同時期に誕生した英仏のライトウェイト・スポーツ。ルノー由来のエンジンを搭載した2台を、英国編集部が振り返ります。
6灯のヘッドライトが印象的なルックス
アルピーヌ・ルノーA310 1600VEの生産台数は、合計2340台。今回登場願った1台は1973年式で、ワイドなガラスカバーの奥に、6灯のヘッドライトが並んだフロントマスクが最大の特徴だろう。イエローのシビエ・レンズが、フレンチだ。
6灯のうち2灯がメインビームで、2灯はハイビーム、さらに2灯はラリー用のロングレンジ・スポットライト。1970年代としては、夜間でも優れた視認性を確保している。
先代のアルピーヌA110のスタイリングを手掛けたのは、イタリアのカーデザイナー、ジョヴァンニ・ミケロッティ氏だったが、A310は社内で描かれた。スポーツカーに飢えていたフランス人にとっては、会心といえるルックスだった。
ホイールベースは2273mmと短いながら、リアエンジン・レイアウトとしたことで、ランボルギーニ・ウラッコよりわずかに広いリアシートが備わっている。実用性も良い。
前後の重量配分は40:60で、タイヤサイズもリアの方が広い。車重はロータス・ヨーロッパより重いものの、825kgと充分に軽量だった。
サスペンションは、リアがスイングアクスル式からウイッシュボーン式へ進化。前後にアンチロールバーも備わっている。
ミドシップの小さなロータスとは異なり、こちらは乗り降りもそれほど難しくない。全高は1048mmと更に低いが、視認性にも優れ、レザーで仕立てられたインテリアには上級感がある。ヨーロッパでは、合皮が用いられている。
魅力度的なロータスのツインカム
ドライビングポジションは、A310の方がやや不自然。ヨーロッパは、レーシングカーのように高いサイドシルとセンターコンソールに挟まれ、身体は適度に保持される。
ステアリングホイールは、2台ともにドライバーの中心線上から僅かに外側へオフセットしている。3枚のペダル・レイアウトもかなりタイトだ。
A310のボンネットを開くと、スペアタイヤと燃料タンク、ラジエーターが満たしている。ヨーロッパは、前後にそれぞれ小さな荷室がある。そのかわり、荷物を置ける+2のリアシートはない。
アルピーヌのテールゲート下には、四角いヘッドカバーとウェーバー・キャブレターが組まれた、直列4気筒エンジンが隠れている。ゴルディーニの手が加えられているが、キーをひねるとすぐに目覚めた。
見た目もそうだが、サウンドも、威勢の良いロータスのツインカムほど魅力的ではない。125psという最高出力に不足はないものの、サイドマウント・カムのアグレッシブなタイミングを活かすには、高めの回転域まで引っ張る必要がある。
今回のクルマの場合は、4000rpmから6000rpmくらいまでの間で若干スムーズさに欠けていた。プラグコードの交換時期かもしれない。
それでも、A310は低回転域でトルクが太く、出だしが良い。そのまま加速を続ければ、滑らかなボディと相まって190km/h以上の最高速度まで到達できる。