ボルボC40 詳細データテスト 強力な加速 物足りない静粛性と質感 望まれるエネルギー効率の改善

公開 : 2022.04.24 11:25  更新 : 2022.04.26 06:26

走り ★★★★★★★★★☆

電動化はボルボに、思いがけないほどのハイパフォーマンスをもたらした。もしプラグインハイブリッドの中型SUVで最速モデルがほしいなら、454psのXC60 T8がおそらくそれにあたるだろう。

C40は、2モーター仕様で408ps。これはBMW iX3やメルセデス・ベンツEQA 350、アウディQ4 E−トロン50をも凌ぐ。

2モーターによる加速性能は強力。走行モードや回生ブレーキのセッティングに関する選択肢は少ないので、細かく好みに合わせたいのであれば不満を覚えるだろう。
2モーターによる加速性能は強力。走行モードや回生ブレーキのセッティングに関する選択肢は少ないので、細かく好みに合わせたいのであれば不満を覚えるだろう。    LUC LACEY

テスラモデルYロングレンジのほうが、パワーだけをみればやや上だ。しかし、0−97km/h加速は、ボルボのほうが0.3秒速い。その差が埋まるのは129km/h到達時点で、そこから先はテスラのほうが速い。そしてC40の最高速度は、ほかのボルボ車と同じく180km/hだ。

4.4秒という0-97km/h加速タイムは、スポーティではないクロスオーバーSUVとしては驚異的だ。大多数のユーザーは、231psの前輪駆動版で十分事足りるはずだ。しかし、目立たないファミリーカー的なボルボが、強力なパフォーマンスを発揮するというのはじつに楽しいではないか。

さらにそのパワーは、どんな場合にも、じれったさもエンジンの唸りも、シフトチェンジやホイールスピンもなしに引き出せる。C40の発進には、ただ右足を踏み込むだけでいい。

前後の電気モーターはどちらもパワフルだ。ハードなスタートダッシュをすると、鼻先が浮いて荷重が抜ける前輪がほんのわずかにスリップする気配があるものの、2モーターのEVは多くがそうであるように、グリップして前へと進んでいく。

スピードが制限されるオフロードモードを除けば、走行モードの選択肢は用意されていない。そのため、C40は常に速さを感じさせるが、スロットルペダルのトラベルが大きいので、ゆったり一定速で走るのも、市街地を流すのも楽にできる。

ドライバーに選択肢が用意されるのは、減速のときだ。最新EVの多くは、エネルギー回生に調整範囲が設けられている。まったく作動しない状態からアダプティブなワンペダル運転可能状態まで、といった具合に。しかし、C40に用意されるのはふたつのみ。まったく回生しないモードと、回生を最大に効かせてワンペダル運転ができるモードだ。

もしもスロットルを抜いたときに少しだけ減速するのが好みだとしたら、フラストレーションを感じるだろう。ふたつのモードの切り替えも、期待したほど簡単ではない。選択肢を見つけるには、ディスプレイを2回タップしてから1回スワイプする必要がある。

ありがたいことに、ワンペダル運転機能とブレーキペダルの協調はうまく調整されている。ワンペダルモードでは、とてもスムースにストップする。ブレーキペダルのフィールは明らかに人工的だが、少なくとも一貫して硬く、楽に調整できる。絶対的なブレーキ性能は、ほかの電動SUVと同程度だ。

記事に関わった人々

  • 執筆

    イリヤ・バプラート

    Illya Verpraet

    役職:ロードテスター
    ベルギー出身。AUTOCARのロードテスターとして、小型車からスーパーカーまであらゆるクルマを運転し、レビューや比較テストを執筆する。いつも巻尺を振り回し、徹底的な調査を行う。クルマの真価を見極め、他人が見逃すような欠点を見つけることも得意だ。自動車業界関連の出版物の編集経験を経て、2021年に AUTOCAR に移籍。これまで運転した中で最高のクルマは、つい最近までトヨタGR86だったが、今はE28世代のBMW M5に惚れている。
  • 執筆

    リチャード・レーン

    Richard Lane

    役職:ロードテスト副編集長
    2017年よりAUTOCARでロードテストを担当。試乗するクルマは、少数生産のスポーツカーから大手メーカーの最新グローバル戦略車まで多岐にわたる。車両にテレメトリー機器を取り付け、各種性能値の測定も行う。フェラーリ296 GTBを運転してAUTOCARロードテストのラップタイムで最速記録を樹立したことが自慢。仕事以外では、8バルブのランチア・デルタ・インテグラーレ、初代フォード・フォーカスRS、初代ホンダ・インサイトなど、さまざまなクルマを所有してきた。これまで運転した中で最高のクルマは、ポルシェ911 R。扱いやすさと威圧感のなさに感服。
  • 撮影

    リュク・レーシー

    Luc Lacey

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    関耕一郎

    Kouichiro Seki

    1975年生まれ。20世紀末から自動車誌編集に携わり「AUTOCAR JAPAN」にも参加。その後はスポーツ/サブカルチャー/グルメ/美容など節操なく執筆や編集を経験するも結局は自動車ライターに落ち着く。目下の悩みは、折り込みチラシやファミレスのメニューにも無意識で誤植を探してしまう職業病。至福の空間は、いいクルマの運転席と台所と釣り場。

関連テーマ

コメント

おすすめ記事

 
×