ボルボC40 詳細データテスト 強力な加速 物足りない静粛性と質感 望まれるエネルギー効率の改善

公開 : 2022.04.24 11:25

操舵/安定性 ★★★★★★★★☆☆

ボルボは、C40を決してクーペとは呼ばないように、スポーティやダイナミックという言葉もまったく使わない。これは斬新なことだ。電動SUVは驚異的なパフォーマンスの持ち主であっても、スポーツカーになろうとする必要はない、ということだ。

そうはいうものの、C40の走りにはじつに満足感を覚えるところがある。スプリングは比較的ソフトだが、ボディの挙動はうまくコントロールされている。かなり重いクルマだが、そのウェイトが路面の最大級のバンプでもフラットに伸してしまうような感覚だ。

飾り気のないC40だが、開けた道ではプレミアムブランドのライバルを寄せ付けない速さで、路面を屈服させるような走りを見せる。エレガントではないが印象的だ。
飾り気のないC40だが、開けた道ではプレミアムブランドのライバルを寄せ付けない速さで、路面を屈服させるような走りを見せる。エレガントではないが印象的だ。    LUC LACEY

従順なサスペンションは多少のロールを生むが、過剰ではない。テスト車が履くピレリPゼロは、ドライコンディションで比較的高いグリップをもたらすが、これはグッドチョイスだといえる。というのも、ステアリングホイール越しに、グリップ限界を察知することができないからだ。

近年のボルボは全体的に、一定して安心感を覚える手応えがステアリングにあるものの、一切のインフォメーションをフィードバックしてくれない。ステアリングフィールを締める選択肢はあっても、操舵が重くなるだけで、感覚は人工的なままで、プラスの要素はあまりない。

ウェットコンディションでは、C40はやや苦戦する。フロントはひたすら進もうとしがちだが、状況の悪い路面で飛ばすと、保守的なスタビリティコントロールが思いがけず効いて、それからリアが歩調を速める。

パフォーマンスカーであれば、この手のムラっ気を見せられるとやる気を削がれる。だが、C40の限界は高いので、もしもそういう事態にたびたび遭遇するとしたら、おそらくそれはドライバーが2.2tの電動SUVの走らせ方を理解していないのが原因だ。

ある程度の自制心を持って運転すれば、C40はB級道路を自信を持って走らせることができるクルマだ。そこにエキサイティングさはないが、穏やかな満足感を得ることができる。

記事に関わった人々

  • 執筆

    イリヤ・バプラート

    Illya Verpraet

    役職:ロードテスター
    ベルギー出身。AUTOCARのロードテスターとして、小型車からスーパーカーまであらゆるクルマを運転し、レビューや比較テストを執筆する。いつも巻尺を振り回し、徹底的な調査を行う。クルマの真価を見極め、他人が見逃すような欠点を見つけることも得意だ。自動車業界関連の出版物の編集経験を経て、2021年に AUTOCAR に移籍。これまで運転した中で最高のクルマは、つい最近までトヨタGR86だったが、今はE28世代のBMW M5に惚れている。
  • 執筆

    リチャード・レーン

    Richard Lane

    役職:ロードテスト副編集長
    2017年よりAUTOCARでロードテストを担当。試乗するクルマは、少数生産のスポーツカーから大手メーカーの最新グローバル戦略車まで多岐にわたる。車両にテレメトリー機器を取り付け、各種性能値の測定も行う。フェラーリ296 GTBを運転してAUTOCARロードテストのラップタイムで最速記録を樹立したことが自慢。仕事以外では、8バルブのランチア・デルタ・インテグラーレ、初代フォード・フォーカスRS、初代ホンダ・インサイトなど、さまざまなクルマを所有してきた。これまで運転した中で最高のクルマは、ポルシェ911 R。扱いやすさと威圧感のなさに感服。
  • 撮影

    リュク・レーシー

    Luc Lacey

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    関耕一郎

    Kouichiro Seki

    1975年生まれ。20世紀末から自動車誌編集に携わり「AUTOCAR JAPAN」にも参加。その後はスポーツ/サブカルチャー/グルメ/美容など節操なく執筆や編集を経験するも結局は自動車ライターに落ち着く。目下の悩みは、折り込みチラシやファミレスのメニューにも無意識で誤植を探してしまう職業病。至福の空間は、いいクルマの運転席と台所と釣り場。

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