名機4A-GEに軽いFRシャシー 若者も吸い寄せるAE86 トヨタ・カローラ・レビン 後編
公開 : 2022.05.14 07:06
大人を吸い寄せ、想像以上に上昇した価値
ホワイトとブラックのツートーンに塗られたトヨタの小さなクーペは、アメリカを発端にスター級の扱いを受けるようになった。加えて、ビデオゲームのグランツーリスモが、その人気を確実なものにしたといっていい。
そんなAE86型のレビンやトレノは、夜のロンドンでも注目度が高いらしい。中心部に停めて短時間撮影していただけでも、何人もの若者が磁石へ吸い寄せられるように集まってきた。
1990年代前後の日本車には、世代を超えて関心が寄せられている。DMCデロリアンだと勘違いした人もいたけれど。実際、その価値は想像以上に上昇している。もはや、簡単に乗れる中古車ではなくなった。
最近では、5万ポンド(約800万円)前後でAE86型のレビンやトレノがオークションに出品されているという。その加熱ぶりを、浮き彫りにする金額だといえる。
夜の街を、ツートーンのカローラ・レビンでドライブする。なんと楽しい時間だろう。湾岸エリアやミッドナイトといった言葉がピッタリだ。しかし現在のロンドン中心部は、熱心に運転できるような環境にはない。通りが静まり返っているわけでもない。
COVID-19が流行していても、ロンドンは眠らない。ロードスイーパーが路肩を掃除し、ウーバーのドライバーが路地を行き交う。東の空が明るくなる頃には、早めに出勤したビジネスマンが歩き始める。
カーブが続く道で理解することの喜び
フォトグラファーと一緒に、カローラ・レビンで南部を目指す。テムズ川を渡りケニントンを抜け、クロイドンへ近づくほど、街灯の数が少なくなる。20kmも走れば、建物より木々が目立ちはじめる。霧が濃くなり、ヘッドライトの光が周囲に溶ける。
ここから先は、地形へ合わせるように道が曲線を描く。1987年式のカローラ・レビンを、思い切り運転することが許される。緩く長く伸びるカーブの先に、気持ちの良いストレートが待っている。
AE86が本当に輝くのは、やはりこの場所だ。群馬県の峠道と同じように、クルマのすべてを開放できる。漫画やゲームという世界の広がりは、リアルがあってこそだと思う。
タコメーターの針を跳ね上げ、暗く沈んだ森の中へ滑り込む。AE86型のトヨタ・カローラ・レビンを本当に理解することの喜びを、全身で味わいながら。
協力:英国トヨタ
トヨタ・カローラ・レビン(AE86/1983〜1987年/英国仕様)のスペック
英国価格:6995ポンド(1983年時)/5万ポンド(約800万円)以下(現在)
販売台数:2717台(英国内)
全長:4210mm
全幅:1630mm
全高:1340mm
最高速度:196km/h
0-97km/h加速:8.3秒
燃費:13.0km/L
CO2排出量:−
車両重量:970kg
パワートレイン:直列4気筒1587cc自然吸気
使用燃料:ガソリン
最高出力:125ps/6600rpm
最大トルク:14.7kg-m/5200rpm
ギアボックス:5速マニュアル