GTの快適性+圧倒的な動力性能 アストン マーティンDBX707へ試乗 707psのSUV 後編 

公開 : 2022.04.28 08:26  更新 : 2022.04.28 09:54

圧倒されるほど高性能なシャシーを得つつ、日常的な快適性も犠牲にしないDBX707。英国編集部が評価しました。

暴力的な動力性能を当然のように処理

アストン マーティンDBX707の真骨頂といえるのが、右足へ力を込めた時。大げさなことを抜きにして、とんでもなく速い。爆発的でもあり、中毒性もある。

近年は、純EVが叶えた0-100km/h加速の鋭さに、若干感覚が麻痺しているところがある。それでも、車重が2245kgもあるDBX707は、それを3.1秒でこなす。この大きさのSUVであることを考えれば、驚異的に速い。

アストン マーティンDBX707(欧州仕様)
アストン マーティンDBX707(欧州仕様)

更に、100km/hを超えても加速力はまったく衰えない。160km/hを超えても、同様に速度が増していく。どこまでこの勢いが保たれるのか、途中で恐ろしくなるほど。

センターコンソールのドライブモード・コントローラーでスポーツ+を選択すると、最もDBX707は鋭くなる。ウェットクラッチを採用した9速ATも、意欲的にエンジンのパワーを速度へ変換していく。

チューニングを受けたシャシーは、暴力的な動力性能を、すべて当然のように処理してしまう。トラクションも、無限と思えるほどに高い。

今回試乗した場所は、地中海に浮かぶスペインのサルデーニャ島だった。ここには、幅が広く舗装された、チャレンジングなルートが長く続いている。走る面白さでは、欧州屈指の道といっていい。

加えて路面状態が一定ではなく、隆起部分や深いワダチなど傷んだ場所も少なくない。シャシーの能力が、つぶさに試される環境でもある。

こんなサルデーニャ島を、DBX707は思う存分楽しませてくれる。改良を受けたステアリングは、手のひらへ正確で豊かなフィードバックを届ける。連続コーナーを高速で駆け抜けることが、本当に気持ちいい。

不自然に感じるほどのコーナリング性能

最新技術を持ってしても物理学には打ち勝てず、タイトコーナーでは最終的にアンダーステアへ転じる。それでも、その手前までならアクセルペダルの踏み加減でテールスライドも自在。DBX707が、喜んでテールを降り出すようにすら思える。

勇敢な気持ちを持っていれば、トラクション・コントロールをオフにもできる。オススメはしないが。

アストン マーティンDBX707(欧州仕様)
アストン マーティンDBX707(欧州仕様)

ただし、基本的には車高が高く、車重のかさむSUVだ。不自然に感じるほど秀でたコーナリング性能を獲得しているが、ある種の不安感もある。それがなければ、アウト側のタイヤへ過度の負荷が掛かることになるだろう。

アンチロールシステムがボディを水平に保ち、遠心力を克服するように務めてくれる。とはいえ、スーパーカーと同等の身のこなしは難しい。

正直、大きなSUVでこれほど激しく運転する必要性に対しては、疑問も持たなくはない。それでも、DBX707のようなクルマへの需要は少なくないのが実際だ。

同時に、環境負荷への意識が高まる近年にあって、燃費は自慢できるものではない。アストン マーティンの主張では7.0km/Lとのことだが、積極的に運転すれば、その半分にも届かない。DBX707の購買層は、気にしないのだと思うけれど。

ちなみに、DBXのプラグイン・ハイブリッド版も2023年半ばには登場予定。モデル平均でのCO2排出量は多少減るだろう。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マーク・ティショー

    Mark Tisshaw

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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