50年後に価値上昇のモデルは? 中編 知る人ぞ知る魅力:アルピーヌA110 先見の明:BMW i3

公開 : 2022.05.07 09:46  更新 : 2022.05.07 17:03

時代を先取りしすぎた:BMW i3

BMW i3の技術を、他メーカーが利用したいと申し出なかったことが、不思議でならない。革新的といえるコンパクトカーは、2022年に生産を終える。クラシックカーとして評価を高める可能性は、小さくない。

今回の選考対象で、純EVだったのはポルシェタイカンとi3の2台だけだった。最終的に5台のなかに選ばれ、筆者としてはうれしい。内燃エンジン以降の世界の自動車も、退屈ではないと考えられるからだ。

BMW i3(英国仕様)
BMW i3(英国仕様)

クルマ好きの間でi3を話題に持ち出すと、大抵の場合、時代を先取りしすぎたクルマだったという答えになるのではないだろうか。登場は2013年で、日産リーフのようなクルマが10年後に一般化するとは、考えることすら難しい時代だった。

彼らの意見は正しい。だが、BMWの答えも間違いではなかった。

BMWは純EVに特化したサブブランド、「i」を生み出した。これまでのクルマに対する先入観の更新に挑み、技術的な可能性を指し示した。少人数だったとしても、先見の明を持つアーリーアダプターのために。

i3は、iブランドの最初のモデルだ。改めて確認してみると、カーボンファイバーより安価で量産に適したシャシーと、281kmより長い航続距離を備えていれば、新モデルとして紹介できそうな内容だとわかる。

10年近くも前に、BMWはこのクルマを完成させた。その仕事は、素晴らしいものだったといわざるを得ない。

未来的な見た目で、本当に運転が楽しい

i3は、大量生産を意図したものではなかったかもしれない。だが、発売時点での完成度は非常に高かった。技術的な挑戦も、小さなものではなかった。

ルノーがコンパクトな純EVを最初に開発した時は、クリオのパワートレインを載せ替え、オリジナルのボディパネルで包んだ。しかし、BMWはまったく新しいコンパクトカーを、ゼロから設計している。

BMW i3(英国仕様)
BMW i3(英国仕様)

駆動用バッテリーで増える車重を相殺するため、シャシーは軽いカーボンファイバーで作られている。市街地での運転のしやすさを考え、車高や窓の高さ、着座位置が決められている。

市街地など低速域での取り回しや敏捷性を高めるため、一般的なコンパクトカーよりボディサイズは小さい。それでいて、狭いもののリアシートが備わり、観音開きのドアによって乗降性も確保されている。

リサイクル素材と、高水準のインフォテインメント・システムを備えたインテリアは、とても雰囲気がいい。動力性能も高く、操縦性にも優れている。正直にいって、i3は本当に運転が楽しい。

スタイリングも特長の1つだろう。未来的で純EVらしいものの、実現されたことに驚くような個性で溢れている。BMW i3が50年後にクラシックカーとして評価されていなければ、逆に未来を問いただしてみたいとすら思う。

BMW i3(英国仕様)のスペック

価格:3万4750ポンド(580万円)
全長:4011mm
全幅:1775mm
全高:1578mm
最高速度:159km/h
0-100km/h加速:6.9秒
航続距離:281km
CO2排出量:−
車両重量:1290kg
パワートレイン:AC同期モーター
バッテリー:42kWh
最高出力:183ps
最大トルク:27.4kg-m
ギアボックス:シングルスピード・ダイレクトドライブ

この続きは後編にて。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マット・ソーンダース

    Matt Saunders

    英国編集部ロードテスト・エディター
  • 撮影

    マックス・エドレストン

    Max Edleston

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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