50年後に価値上昇のモデルは? 後編 見事な再解釈:ランドローバー・ディフェンダー 全天候型高性能:トヨタGRヤリス 

公開 : 2022.05.07 09:47

最高のドライバーズカーなトヨタGRヤリス

トヨタGRヤリスは、コンパクト・ハッチバック、ヤリスのちょっと高性能な3ドア版だとお考えかもしれない。実際は、それ以上の内容が与えられている。近年注目を集めるGAZOO(ガズー)レーシングによる、GRスープラに続く2番目のスポーツモデルだ。

冷めかけていたホットハッチ市場に、鮮烈なインパクトを与えただけではない。手頃な価格のドライバーズカーの投入は、トヨタ自体の評価も大きく高めることにつながった。

ランドローバー・ディフェンダー90 D250(英国仕様)
ランドローバーディフェンダー90 D250(英国仕様)

AUTOCAR英国編集部がGRヤリスをどれだけ高く評価しているかは、既にご存知の読者も多いだろう。初試乗から詳細テストまで、満点の結果を残し続けてきた。この価格帯としては、最高のドライバーズカーだといえる。

英国へ導入された2020年には、どんな高性能モデルよりGRヤリスが話題を奪った。今でも、その注目度は高いままだ。

少し人為的なエンジンサウンドが引っかかるとはいえ、純粋なドライビング体験こそ、GRヤリスの真骨頂。ローンチ・コントロールやハイブリッドなどは搭載していない。エンジンは小さな3気筒ターボでしかない。

それでも、この小さなホットハッチは、高次元のスポーツカーとも渡り合えるだけの動的能力を備えている。これほど気持ちの良いクルマは、そうそう出てこない。

全天候型のコンパクト高性能モデル

モータースポーツへ積極的に関わりを持ち始めたトヨタと、ガズー・レーシングによって、GRヤリスはゼロから開発されている。エンジンは1.6Lの3気筒ターボ。260psと36.7kg-mという数字は、現代ではインパクトが少々弱い。

しかし、アクセルレスポンスは最高。6速マニュアルを駆使すれば、0-100km/h加速5.5秒という鋭いダッシュも披露する。四輪駆動でグリップとトラクションは甚大。ドライバーに安心感も与えてくれる。

トヨタGRヤリス・サーキットパッケージ(英国仕様)
トヨタGRヤリス・サーキットパッケージ(英国仕様)

安定性と俊敏性との絶妙なバランスにある、シャシーの能力も引き出しやすい。タイトコーナーへも、思いっきり突っ込んでいける。

オプションのサーキットパッケージを装備すれば、サスペンションとステアリング、前後のトルセンLSDにも手が加えられ、極上の操る喜びを享受できる。同等の体験が得られるモデルは、このクラスには存在しないといっていい。

全天候型の高性能モデルとして、GRヤリスは圧倒的なクラス優勝車だ。同時に、日常性を忘れていないところも素晴らしい。少し丁寧に運転すれば、燃費は11.0km/L以上まで伸びる。

1990年代のラリー・ホモロゲーション・モデルを彷彿とさせる、GRヤリス。絶滅危惧種であることは間違いない。トヨタとレクサスは、2030年までに30車種の純EVを展開すると発表した。そのなかに、こんなモデルが含まれる可能性は低い。

許されるうちに、可能なうちに、1度試乗してみて欲しい。オーナーになれた幸運な人は、簡単には手放さない方が良いだろう。

トヨタGRヤリス・サーキットパッケージ(英国仕様)のスペック

価格:3万4620ポンド(578万円)
全長:3995mm
全幅:1805mm
全高:1455mm
最高速度:230km/h(リミッター)
0-100km/h加速:5.5秒
燃費:12.2km/L
CO2排出量:186g/km
乾燥重量:1280kg
パワートレイン:直列3気筒1618ccターボチャージャー
使用燃料:ガソリン
最高出力:260ps/6500rpm
最大トルク:36.7kg-m/3000-4600rpm
ギアボックス:6速マニュアル

記事に関わった人々

  • 執筆

    イリヤ・バプラート

    Illya Verpraet

    英国編集部ライター
  • 執筆

    ジャック・ウォリック

    Jack Warrick

    英国編集部ライター
  • 撮影

    マックス・エドレストン

    Max Edleston

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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