AMG最強で初のPHEV メルセデスAMG GT 63 S Eパフォーマンスへ試乗 トルク149.3kg-m 後編
公開 : 2022.04.25 08:26
新次元といえる領域へ高められた動力性能。AMGとして最強で初のPHEVを、英国編集部が評価しました。
内燃エンジン版と遜色ない敏捷性
メルセデスAMG初のプラグイン・ハイブリッド(PHEV)となる、GT 63S E パフォーマンス。車重2380kg、全長5054mmのサルーンが披露するロケットダッシュには、息を呑む。300km/hまで、ためらうことなく加速していく。
そのたくましさは尋常ではない。エネルギーを路面へ展開する四輪駆動システムの完成度も、卓越といっていいだろう。
回生ブレーキの能力も優秀。時によってはエンジンの余力で充電可能で、ケーブルをつながずにバッテリーの電気を回復できる。サーキットで試したところ、2周ほど穏やかに周回すれば、フルアタックへ充分な充電量が得られるようだった。
これだけの動力性能だから、コンフォート・モードでも乗り心地は基本的に硬い。しかし、路面の粗野な凹凸などは、迅速に変化するアダプティブダンパーが巧みに吸収してくれる。
高速域でのしなやかさも印象的。高速道路でも、車内の平穏を保ってくれる。
一方で、劣化したアスファルトや継ぎ接ぎに対しては、少々過敏。大きな接地面を持つタイヤからは、ロードノイズが盛大に発生する。全体的に素晴らしい長距離ツーリングでの印象を、低めてしまっていた。
ステアリングホイールの反応は、切り始めからシャープ。重たいPHEVだとしても、GT
63 S 4ドアクーペと遜色ない敏捷性を備えている。意欲的に進路を変えていく振る舞いには、舌を巻く。
パワーステアリングは電動機械式。手のひらへ伝わってくるフィードバックも、充分あるように感じた。
リアが重くなり50:50へバランス改善
高速でコーナーへ突っ込んでいくと、明確にボディロールが生じるが、巧みに抑制されている。旋回を始めた段階から徐々に角度が増していくため、限界が迫っている状況も把握しやすい。
タイヤはミシュラン・パイロットスポーツ4が標準。四輪駆動システムの恩恵もあり、グリップ力にも事欠かない。
スポーツからスポーツ・プラス、レースへと、ドライブモードを引き締めるごとにレスポンスが高まり、クルマとの一体感も深まっていく。シャシーの能力を探るほど、リアタイヤ主導に調整された操縦性も濃くなっていく。
つまり、楽しさも増していく。駆動用モーターやバッテリーで加算された重さが消えることはない。それでも、アクセルペダルの踏み加減でコーナリング姿勢を変化させることも可能だ。
常にトラクション状態を監視している四輪駆動システムの4マテック+は、通常のメルセデス・ベンツとは設定が異なる。テールスライドと同時に、積極的にフロントタイヤ側へ駆動力を分配する。
その結果、安心感のあるニュートラルな挙動が維持される。スタビリティ・コントロールの効きが弱い状態であっても。
PHEV化で興味深い点が、前後の重量配分。リア側にコンポーネントが追加されたことで、54:46から50:50という理想値へ整ったらしい。
「動的能力という点では、PHEVは内燃エンジンのみのモデルを超えていません。しかしリア側のウエイトが増えたことで、全体的なバランスは改善されています」。とハーマンが説明する。