日産「アリアB6」試乗 eパワーの知見が、EVを進化させている その走りとは

公開 : 2022.04.23 21:05  更新 : 2022.04.23 22:15

どんな感じ?

1.9tを超える車重にして動き出しにタメがない。スッと発進する。

重量が増せば駆動系の捻れなどの“逃げ”がもたらすタイムラグやトルク変動を意識させない。それでいて重みを感じさせる余韻とでもいうような“加速の繋がり”もある。

メディア向けの撮影用車両は2トーン車(ルーフがミッドナイトブラック)が多いが、今回の試乗は1トーン仕様。
メディア向けの撮影用車両は2トーン車(ルーフがミッドナイトブラック)が多いが、今回の試乗は1トーン仕様。    宮澤佳久

ノートより上級クラスの味わいを、電動できっちりと表現したパワーフィールと言えよう。

パワー制御の特性を変えるドライブモードとして、エコ/ノーマル/スポーツの3モード設定。これとは独立して、エンブレ回生力を強化するeペダルを設定。

ドライブレンジは「D」「B」の2レンジ設定。走行状況や運転スタイルに応じて、加減速特性を選択できるのもアリアの特徴だ。

加速特性の違いはドライブ3モード。浅いペダルストロークではモード名の通りの印象だ。

モードとeペダルの違いが出るのはエンブレ回生。

最も弱いのは「エコモード」のeペダルオフ。アクセルオフ時はコースティング(空走)状態。

eペダルオフの「ノーマルモード」は、一般的ガソリン車の巡航ギアでのエンブレに相当する。

eペダル「ON」にすると?

eペダルオン時と「スポーツモード」のエンブレ回生は強力で、ガソリン車なら巡航ギアから2段くらい、4000回転くらいでエンブレを利かせた感覚である。

ガソリン車のエンブレよりもはるかにコントロール性がよく、静粛性にも影響はないが、それでも加減速を抑えた滑らかな運転ではeペダルオンはエンブレが過剰。

eペダルのオン/オフはこちらのボタンで操作する。また、コンソールは全体が前後に150mm動かせる電動式となっている。
eペダルのオン/オフはこちらのボタンで操作する。また、コンソールは全体が前後に150mm動かせる電動式となっている。    宮澤佳久

エンブレを多用、あるいはスポーティなフィールを好むドライバー向けだ。

なお、回生協調電子制御ブレーキを採用しているが、フットブレーキでは挙動安定のため軽い制動でも後輪ブレーキを作動するため、厳密に言えばエンブレ回生より効率が低下するとのこと。

付け加えれば4WD車は後輪制動でも回生するので、回生効率がFF車よりも向上するという。

重量物のバッテリーは、床下に配置。低重心に加えて重量物を重心近くに置くのは運動性向上ではとても有利である。

逆に落ち着きや据わりなど安定の側面が不利な点。

この辺りをどう折り合わせるかがフットワークの腕の見せ所だ。

走り/乗り心地について

全般の印象では、重量を活かしたしなやかさと安定感が持ち味。操舵追従は初期反応を穏やかに、狙いのラインに収まる。

高速の直進もコーナリングも高い全高に比べて据わりがよく、山岳路も高速も気構えることなくこなせる。

EV専用のプラットフォームで作られるアリアは、フロアがフラット。バッテリーとフロアは一体化構造に。バッテリーはクロスメンバーを内蔵し骨格部材としての役割も果たす。
EV専用のプラットフォームで作られるアリアは、フロアがフラット。バッテリーとフロアは一体化構造に。バッテリーはクロスメンバーを内蔵し骨格部材としての役割も果たす。    宮澤佳久

運転時のサイズ感もほどよく、馴染みやすい。先読みのしやすい特性でもあり、修正操舵に神経質になる必要もない。

乗り心地については速度抑制舗装などの小さな段差乗り越えでの細かな突き上げ・ピッチングが目立ったのが気になったが、乗り味はプレミアムを実感するに十分だ。

大きめの段差乗り越え・うねり路面などではサスストローク速度を抑えたしなやかな路面追従感を示し、車体挙動の収束感も良好。

サスストローク量が示す「硬さ」に比べるとゆったりとした味わいがある。

欲を言えばリアサスの動きにもう少し沈み込みが欲しいが、ノートの4WDがそうであるように、アリアも4WDモデルはリアサスを積極的にストロークさせる設定になる模様。

走りの質にこだわるなら4WDモデルを待ってもいいだろう。

記事に関わった人々

  • 執筆

    川島茂夫

    Shigeo Kawashima

    1956年生まれ。子どものころから航空機を筆頭とした乗り物や機械好き。プラモデルからエンジン模型飛行機へと進み、その延長でスロットレーシングを軸にした交友関係から自動車専門誌業界へ。寄稿していた編集部の勧めもあって大学卒業と同時に自動車評論家として自立。「機械の中に刻み込まれたメッセージの解読こそ自動車評論の醍醐味だ!」と思っている。
  • 撮影

    宮澤佳久

    Yoshihisa Miyazawa

    1963年生まれ。日大芸術学部写真学科を卒業後、スタジオ、個人写真家の助手を経て、1989年に独立。人物撮影を中心に、雑誌/広告/カタログ/ウェブ媒体などで撮影。大のクルマ好きでありながら、仕事柄、荷物が多く積める実用車ばかり乗り継いできた。遅咲きデビューの自動車専門誌。多様な被写体を撮ってきた経験を活かしつつ、老体に鞭を打ち日々奮闘中。
  • 編集

    徳永徹

    Tetsu Tokunaga

    1975年生まれ。2013年にCLASSIC & SPORTS CAR日本版創刊号の製作に関わったあと、AUTOCAR JAPAN編集部に加わる。クルマ遊びは、新車購入よりも、格安中古車を手に入れ、パテ盛り、コンパウンド磨きで仕上げるのがモットー。ただし不器用。

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