脱伝統のスタイリング メルセデス・ベンツEQE 350+へ試乗 競争力の高い電動サルーン

公開 : 2022.05.07 08:25

ラグジュアリーな雰囲気に感心する

EQEのダッシュボードには、木目が活かされたウッドパネルがあしらわれ、中央には巨大なタッチモニターと、メーター用のモニターが据えられる。ヘッドアップ・ディスプレイも付く。ハイパースクリーンがなくても、雰囲気には優れる。

走り出してみると、EQEのラグジュアリーな質感に感心する。しなやかなエアサスが市街地の路面を滑らかに均し、とても静かで穏やかな移動空間を生んでいる。風切り音も、殆ど聞こえてこない。

メルセデス・ベンツEQE 350+(欧州仕様)
メルセデス・ベンツEQE 350+(欧州仕様)

コンフォート・モードを選んでいれば、路面電車の線路を超えたとしても気にならない。橋桁の継ぎ目も同様だ。

ステアリングホイールの感触はフィルターが掛かったようだが、直感的に操作できる。驚くほど扱いやすく、混雑した市街地にも簡単に馴染める。機敏な操縦性と引き締まった姿勢制御は、速度域が上がっても好感触なままだった。

駆動用モーターは、リア側に搭載される1基のみで、最高出力は292ps。ほとんどの場面で、即時的に不足ないパワーを発揮してくれる。航続距離に限りのある現状では、AMG級のパワーを必要だとも考えにくい。

EQE 350+の航続距離は、カタログ値で最長634kmがうたわれている。今回の試乗では、450kmから480km前後が現実的な範囲のようだった。

ナビゲーションが指定したルート沿いにある充電器の場所を、充電速度でグループ分けして表示してくれることには感心した。既に使用中のものは、省かれてもいた。

競争力の高い純EVサルーンだけれど

回生ブレーキには複数のモードが用意されているが、インテリジェント・モードが非常に安楽だった。クルーズコントロールを用いて高速道路を走っているような場面では、ペダル操作がほぼ不要に思えるほど。

EQEは周囲の交通状況に合わせて、自動的にスピードを調整してくれる。速度標識も自ら読み取り、赤信号にもしっかり反応してくれる。

メルセデス・ベンツEQE 350+(欧州仕様)
メルセデス・ベンツEQE 350+(欧州仕様)

もしドライバーが操作したければ、ステアリングホイール裏のパドルで、回生ブレーキの強さを変えられる。大きく変化する減速感を選ぶことも、それはそれで面白い。ブレーキペダルの感触は若干スポンジー。気になった点は、その程度だ。

現在のEクラス・オーナーがEQEへ乗り換えれば、その高級感や洗練度、運転のしやすさ、車載技術などに感心するはず。純EVへのシフトを決断し、従来より多めの予算を用意する必要があるとはいえ、航続距離や急速充電能力も優れる。

完璧ではないかもしれないが、EQEが競争力の高い純EVサルーンであることは間違いない。ただし、これを初めて見た人が伝統あるメルセデス・ベンツだと感じ、欲しいと心が動くかどうかは別でもある。

大胆なスタイリングではある。だが、本当に素晴らしいプロダクト・デザインだとすれば、筆者が疑問を抱くようなこともなかったと思う。

メルセデス・ベンツEQE 350+(欧州仕様)のスペック

英国価格:7万6450ポンド(約1276万円)
全長:4946mm
全幅:1961mm
全高:1512mm
最高速度:210km/h
0-100km/h加速:6.4秒
航続距離:572-634km
電費:5.3-6.2km/kWh
CO2排出量:−
車両重量:2280kg
パワートレイン:永久磁石同期モーター
バッテリー:90kWhリチウムイオン(実容量)
最高出力:292ps
最大トルク:57.5kg-m
ギアボックス:シングルスピード・オートマティック

記事に関わった人々

  • 執筆

    マット・ソーンダース

    Matt Saunders

    英国編集部ロードテスト・エディター
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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