ナルド・サーキットを仮想空間に再現 高精細デジタルコースで自動車開発に貢献

公開 : 2022.04.28 18:05

イタリアの有名なナルド・テストコースをデジタルで再現する試みが、英国企業を中心に行われています。

開発コストと時間を削減 次世代EVに活用

イタリアの有名なテストコース、ナルド・サーキットを仮想空間にデジタルで再現し、次世代EVの開発に役立てようという試みが行われている。

3Dモデリングコースなどで知られるソフトウェア会社rFproが進めているこのプロジェクトは、ナルドのテストコースを仮想空間に作成し、自動車メーカーが新型車を物理的に構築する前にその性能をテストできるようにするというものだ。

イタリアのナルド・サーキット
イタリアのナルド・サーキット

これにより、開発の初期段階で車両のベンチマーク性能を評価することができ、時間とコストの節約につながる、と同社は述べている。

rFproのオペレーション・ディレクターであるマット・デイリーは次のように述べている。

「自動車業界はICEから電動化に移行しており、開発エンジニアはルールブックを書き直さなければならなくなっています」

「電動化されたパワートレインとシャシーの相互作用は、従来のエンジンのそれとは大きく異なります。そのため、エンジニアは開発後期での問題発生を防ぐために、この変化に対する理解を早めたいと考えています」

ポルシェが所有するナルド・サーキットは、世界有数のテストコースであり、主要な自動車メーカーがこぞって利用している。全長約12kmのリング状の外周コースの中に、6.2kmのハンドリングコースを擁している。ハンドリングコースには多数のバンプやカーブが存在し、車両の動力性能・快適性が試されるレイアウトとなっており、シャシー開発に理想的とされる。

このサーキットのマネージング・ディレクターであるアントニオ・グラティスは、rFproのプロジェクトを支持し、こう語っている。

「ハンドリングトラックのデジタル版を作ることで、メーカーはサスペンション、ステアリング、ブレーキといったシャシー開発プログラムを加速させることができるようになります」

rFproは、デジタルコースが開発ツールとして有用であるためには、本物と同等の精度が必要であると述べている。これを実現すべく、位相差レーザースキャンを使用して、約1mmの精度でモデルを作成しているという。

同社のソフトウェアの特徴は、地表を高精細にシミュレートできるサーフェスモデル「TerrainServer」にある。重要なディテールを見逃す可能性のあるポイントベースのサンプリング手法よりも正確であるとのこと。

「ナルドのテストコースは、トラックベースのビークル・ダイナミクス開発において世界トップクラスの環境です」

「非常に詳細なデジタルモデルは、顧客企業のソフトウェア開発ツールチェーンの一部として統合され、エンジニアリング開発と検証の時間、ひいてはコストを大幅に削減することができるのです」

記事に関わった人々

  • 執筆

    AUTOCAR UK

    Autocar UK

    世界最古の自動車雑誌「Autocar」(1895年創刊)の英国版。
  • 翻訳

    林汰久也

    Takuya Hayashi

    1992年生まれ。幼少期から乗り物好き。不動産営業や記事制作代行といった職を経て、フリーランスとして記事を書くことに。2台のバイクとちょっとした模型、おもちゃ、ぬいぐるみに囲まれて生活している。出掛けるときに本は手放せず、毎日ゲームをしないと寝付きが悪い。イチゴ、トマト、イクラなど赤色の食べ物が大好物。仕事では「誰も傷つけない」「同年代のクルマ好きを増やす」をモットーにしている。

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