北米新ブランドが純EV発売 ルーシッド・エアへ試乗 合計1111psに最長836km 前編

公開 : 2022.05.08 08:25

テスラ開発へ関わった技術者による、新ブランドの新モデル。英国編集部が初期の量産仕様を評価しました。

1111psが生む拷問のような加速力

純EVスーパーサルーンのアクセルペダルへ、軽く力を込める。拷問のような加速力で、身体がシートへ押し付けられる。最高出力1111psのルーシッド・エアなら、そんな体験が味わえる。

前後に1基づつ搭載された駆動用モーターの最大トルクは、合計で141.4kg-m。0-100km/h加速2.5秒というロケットダッシュに、腕や首の筋肉は耐えることができない。関節すら痛くなる。

ルーシッド・エア・ドリームエディション・パフォーマンス(北米仕様)
ルーシッド・エア・ドリームエディション・パフォーマンス(北米仕様)

すさまじい瞬発力は、テスラモデルS プレイドなどと渡り合う上で必要な能力なのだろう。しかも、パワーだけで挑むのではない。1度の充電で走れる航続距離は、最長836kmが主張されている。

アメリカのEPA値で比較すると、モデルS プレイドより160km以上も遠くを目指せる。90psほど最高出力が高いにも関わらず。

欧州市場への進出も前提にあり、右ハンドル車の生産予定もあるとのこと。つまりこのエアは、英国でも2022年のうちに注文できるようになる見込み。

ただし、お値段を聞くと近づきにくい。今回アメリカ・カリフォルニアで試乗したクルマは、トップグレードのドリームエディション・パフォーマンスだったが、約13万1000ポンド(2187万円)のプライスタグを下げていた。

ちなみに、ルーシッド・モータース社はアメリカ・カリフォルニアに拠点を置く、新興純EVメーカー。創業は2007年で、テスラ・モデルSの開発へ関わったピーター・ローリンソン氏がCEOを務めている。

低くドラマチックなプロポーション

エアに投じられた技術力は非常に高度。インテリアやボディは美しく仕上げられ、クラス最長といえる航続距離を実現している。メルセデス・ベンツEQSに並ぶ存在として、その価値を見出す人もいるだろう。

滑らかなフォルムは、サイズ感を狂わせる。目の当たりにすると、写真で見る以上に大きい。全長が4976mm、全幅は1939mm、全高は1410mmあり、実際はEQEに近い。

ルーシッド・エア・ドリームエディション・パフォーマンス(北米仕様)
ルーシッド・エア・ドリームエディション・パフォーマンス(北米仕様)

このスタイリングを描き出したデザイナーは、現行のマツダMX-5(ロードスター)やフォルクスワーゲン・シロッコも生み出した人物。低くドラマチックなプロポーションは、モダンなシトロエンDSの様な風格を漂わせる。

ツートーンのボディ塗装も印象的。メルセデス・ベンツEQEとは異なる、エキゾチックさがある。パワートレインは驚くほどコンパクトにまとまり、駆動用バッテリーがフロアに敷き詰められたスケートボード構造を持つ。

ホイールベースは2960mmと長く、ローリンソンの言葉を借りれば、メルセデス・ベンツSクラス並みの車内空間を創出したという。それに準じるラグジュアリーさも。

彼の経歴は、誰もが羨むような華やかさだ。ロータスジャガーで主任技術者を務め、テスラ・モデルSの父となった。その経験が、ルーシッド・エアに完璧なスターティング・ポイントを与えたといって良い。

F1チームの、レッドブル・レーシングへ協力を仰ぎ、空力特性が煮詰められている。徹底的なドラッグ低減を図り、空気抵抗を示すCd値は0.21と充分に低い。ちなみにメルセデス・ベンツEQSは、0.20を実現している。

記事に関わった人々

  • 執筆

    AUTOCAR UK

    Autocar UK

    世界最古の自動車雑誌「Autocar」(1895年創刊)の英国版。
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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