北米新ブランドが純EV発売 ルーシッド・エアへ試乗 合計1111psに最長836km 後編

公開 : 2022.05.08 08:26

テスラ開発へ関わった技術者による、新ブランドの新モデル。英国編集部が初期の量産仕様を評価しました。

圧倒的な動力性能に心が動かされる

ルーシッド・エアのインテリアは、デザインの雰囲気や質感で、テスラモデルSを凌駕する。倍近い価格であることを考えれば、相応ともいえるが。

フロントガラスは、ドライバー上部まで大きく伸びていて開放的。だが、見慣れたカタチのサンバイザーがガラスの中ほどに付いていて、せっかくの印象を濁らせていた。もう少し、違う処理ができたと思う。

ルーシッド・エア・ドリームエディション・パフォーマンス(北米仕様)
ルーシッド・エア・ドリームエディション・パフォーマンス(北米仕様)

量産初期となる試乗車の内装は、AピラーやBピラー部分のパネルにギャップが見られ、組み立て品質が充分とはいえないようだった。少なくとも、走行中に振動音はしなかったが。モデルSは、未だにカタカタと鳴ることがある。

円形のステアリングホイールを握り、エアを走らせてみる。印象は素晴らしい。息を呑むほどの、圧倒的な動力性能に心が動かされる。

メルセデス・ベンツの技術者はEQSのために、エンジンサウンドに代わる、電動パワートレインと関連付けたサウンドスケープを開発した。反面、ルーシッド社は駆動用モーター本来の音を聞かせることにしたという。

筆者としては、そのノイズが心地良くは思えなかった。60km/hと110km/h付近で、鳴き声のような回転音が響いてくる。同社の技術者は、パワートレインとドライバーとの結びつきを感じさせ、オーナーは気に入るだろうと話していたけれど。

また、常時強めに効く回生ブレーキにも、煩わしさを感じるかもしれない。ワンペダル・ドライブが可能で慣れると便利なのだが、効きの強さを調整できた方が良い。

基本的には好感触なステアリングとサス

乗り心地は悪くないものの、路面が荒れた区間を走らせると、Sクラスにまでは及ばないことがわかる。一方で、BMW M5に迫るようなスポーツサルーンというわけでもない。モデルS プレイドの方が、よりスポーティだといえる。

英国郊外のように緩くカーブが連続する、舗装の傷んだルートを運転してみたが、回頭性も活発とはいいにくい。サスペンションは少し緩めで、最もダンパーをハードな設定にしても、ペースを速めると起伏のバウンドでフロント下部を路面に擦る場面があった。

ルーシッド・エア・ドリームエディション・パフォーマンス(北米仕様)
ルーシッド・エア・ドリームエディション・パフォーマンス(北米仕様)

とはいえ、基本的にステアリングホイールの反応はシャープで正確。サスペンションの減衰力も、普通に走らせている限り好印象ではある。

ルーシッド社によれば、Sクラスとの差を縮めるような、エアサスペンションの開発を進めているという。標準では、スチールコイルが組まれている。

ドライビングモードにはスムーズ、スイフト、スプリントという3種類が用意されている。スムーズ・モードでは、最高出力が804psへ制限されるものの、まったく不足はない。加速力は鋭いままで、ステアリングホイールの操舵感は軽く、最も心地良い。

スプリント・モードを選択すると、1111psが開放される。しかし、ステアリングホイールの操舵感を個別に重く切り替えるような、インディビジュアル・モードは備わらない。

高速道路では、ワダチに車体が振られてしまう様子が目立った。ステアリングホイールの正確性は、もう少し高めたいところだ。

記事に関わった人々

  • 執筆

    AUTOCAR UK

    Autocar UK

    世界最古の自動車雑誌「Autocar」(1895年創刊)の英国版。
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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