EVのアフターマーケット市場 航続距離延長、出力アップは可能か? 海外で人気の改造を紹介

公開 : 2022.04.29 06:25

注目を集めつつあるEVのカスタマイズ。購入後にどのような改造を楽しめるのか、海外の事例を紹介します。

EVのチューニングはまだ難しい?

欧州を中心にEVが普及し始める中、自分のクルマをより良くしたい、目立たせたいと考える人が出てきている。このようなカスタム需要の高まりに応えるため、スポーティなドレスアップキットから自動開閉式のフランク(前部トランク)まで、あらゆるものを販売するアフターマーケット専門メーカーが登場している。

しかし、唯一うまくいっていないのが性能面でのカスタムだ。EVのパワーと加速力を上げることは、安全性はもちろん、冷却や保証にも影響を及ぼす複雑で高価な改造である。いずれにせよ、大半のEVオーナーは標準的な仕様でもその性能に満足している。

EVのアフターマーケット市場は成長しつつあるが、性能面においてはまだ十分とは言えないようだ。
EVのアフターマーケット市場は成長しつつあるが、性能面においてはまだ十分とは言えないようだ。

日産リーフは、2011年から販売されている最も古いEVであり、アフターマーケットも盛り上がっている。オランダのMuxsan社は、3種類の追加バッテリー(11kWh、22kWh、33kWh)を設計・販売しており、車齢に応じて50~130kmの航続距離延長が可能だ。

大型のバッテリーでは車重が160kg増えるため、Muxsan社では22kWhと33kWhのバッテリー価格に、ハンドリングを維持するサスペンションチューンを含んでいる。

英国のEV専門店クリーブリー・モーターズでは、こうした追加バッテリーの取り付けを行っているが、創業者のマット・クリーブリーは、Muxsan社製品の改良版が出るまで待っていると言う。「現行品でもいいのですが、トランクルームの半分くらいが埋まってしまうので、あまり売れていないんです。新型は出力密度が向上し、もっと実用的になるはずです」

Muxsan社の追加バッテリーは、本体と取り付け工賃で約5000ポンド(約80万円)からと安くはないが、マットによると、リーフが好きで長く維持したい人にとっては、新モデルを買うよりもお得だという。

利便性の向上も可能 でも定番は足回り

また、Muxsan社は充電器のアップデートも行っている。リーフには旧式のCHAdeMO充電器が搭載されているが、最大160kWの高速充電を可能にするCCS規格のものに変更できるのだ。

アダプターを切り替えるもので、既存のケーブルは引き続き使用することができる。ただし、CCS規格へのアップグレードは、Muxsan社の追加バッテリーとの組み合わせでのみ高速充電を実現できる。さらに、熱管理システムを新たに搭載する必要があるが、これは来年以降の導入となる。

古いEVの充電能力を高める改造も、注目を集めつつあるようだ。
古いEVの充電能力を高める改造も、注目を集めつつあるようだ。

リーフに搭載されている古いバッテリーを、中古品に交換することも可能だ。40kWhまたは60kWhのバッテリーを事故車から調達し、価格は約8500ポンド(約140万円)から。マットによれば、顧客はリーフをリフレッシュする費用対効果の高い方法だと考えているという。しかし、中古バッテリーは太陽光発電の蓄電用に買い占められるため、入手が困難になり、価格も高くなっているそうだ。

バッテリー関連以外にも、さまざまなカスタムが用意されている。クリーブリーではテスラの自動開閉式フランクの装着を行っている。「オーナーのスマホアプリで操作でき、両腕が買い物でふさがっているときに便利です」と彼は言う。このアプリを開発したのは中国企業のHannshowだ。

一方、ブレーキやサスペンションのカスタムもEVオーナーの間で人気が出てきている。英サリー州キャンバリーにあるティーボ・ソリューション社の創設者であるジョン・チェンバースは、「テスラには十分すぎるほどのパワーがあるので、当社は機械的なアップグレードに重点を置いています。ブレーキ、サスペンション、ホイールがテスラの弱点ですが、改造にはそれほど時間はかかりません」と語っている。

特にサーキット走行をする人には、APレーシングのキャリパー、パッド、ディスクでブレーキをアップグレードすることを勧めている。「サーキット走行に最適ですが、高速道路でのブレーキングも向上します」とジョンは言う。

記事に関わった人々

  • 執筆

    ジョン・エバンス

    John Evans

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    林汰久也

    Takuya Hayashi

    平成4年生まれ愛知在住。幼少期から乗り物好き。住宅営業や記事編集者といった職を経て、フリーランスとして自動車メディアで記事を書くことに。「誰も傷つけない」「同年代のクルマ好きを増やす」をモットーにしている。イチゴ、トマト、イクラなど赤色の食べ物が大好物。

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