日本車400台「不正輸入」、米で発覚 日本に返還される? 国土安全保障省が扱う大事件に
公開 : 2022.05.02 11:15
米フロリダでスカイラインなどの日本車約400台の不正輸入が発覚し、容疑者が収監。クルマの行方と発覚の経緯を解説します。
約400台 不正輸入が発覚
3月半ば、米国フロリダ州で日本製スポーツカーなど346台を不正に輸入した罪で2名の輸入業者が逮捕されたことが明らかになった。
「SOHOアライアンス」のアンドレ・ディアスと「J-Specガレージ」のチョン・ニコルの2名である(なお、J-SpecとあるがAUTOCAR JAPANが2020年6月に報じた、日本からの盗難車をバラバラにして売りさばいていたJ-Spec Auto Sports Inc.とは無関係)
不正輸入とはどういうことなのか? しかも約400台とはかなりの台数だ。
彼らの罪(CHARGE)を見るといずれも、書類の偽造や偽名での登録、また違法な道具を使用しての登録……などとある。
日本から輸入された約400台はアメリカ合衆国へ合法的に輸入できる「25年ルール」を満たさず、またFMVSS(アメリカの保安基準)にも適合していなかった。
それで「不正輸入」ということである。
捜査は7年近い時間をかけておこなわれており、2014年頃から情報提供があったクルマもあるという。
約400台にはほとんどオーナーがいて、これまで普通に使用されていたが、事件発覚後に「タイトル」(日本で言うところの「登録」と同様の意味)を取り消されており、現在はもはやアメリカの道路を走ることもできなければ、所有しておくこともできない状態だ。
登録が取り消される=没収という形になるため、おそらくオーナーの手に戻ることはない。
アメリカはこのような罪は日本では考えられないほど厳しい。
25年を満たさない日本車をアメリカに輸入し、25年が経過するまで自宅ガレージなどで保管するのもダメなのである。
日本とは大きく違う「重罪」
実際、日産スカイラインGT-R(R34)など25年に満たない日本車を自宅ガレージにて保管していたところ、警察が訪ねて来て事情を知らない家族などが対応し、クルマが没収された例も複数ある。
州によっても違うが、破壊された例も少なくない。
とくに近年はアメリカに入ってくる旧車が急増し、また価格も高騰している車種については、なおさら厳しい監視の目が向けられている。
今やその名前をよく聞くようになった「25年ルール」についてあらためて説明しておきたい。
「25年ルール」とは製造から25年経過したクルマはアメリカの保安基準FMVSSを満たしていなくてもアメリカへ輸入できる、という制度である。
メルセデス・ベンツのロビー活動によって新車並行輸入車を規制するために1960年代の終わりにスタートしたルールだったが、その後、規制内容が緩和され製造から25年経過していれば合法的にアメリカへ輸入できるという内容に改正された。
それが現在の25年ルールとほぼ同じ内容で1998年に始まった。
アメリカでの日本車人気が急激に高まった2010年代以降は、日産スカイラインR32(2014年解禁)、R33(2020年解禁)などの人気車種が解禁となるタイミングにあわせて輸入台数が急増した。
2011年には816台だったのが2021年にはなんと1万台を突破するまでに拡大したのである。
ただし、25年ルールはあくまでもアメリカに輸入するための国のルールである。
製造から25年経過すれば輸入はできても、アメリカすべての州でスムーズに登録できるとは限らない。
販売や登録に関するルールはあくまでも「州」が主体となる。
近年、一部の州では25年を経ていても軽トラックや軽自動車の輸入が困難になっているところもある。