ステルヴィオと同じ4気筒 マセラティ・グレカーレ GTへ試乗 売れ筋カテゴリーの稼ぎ頭 後編

公開 : 2022.05.11 08:26

新しいマセラティ製DセグSUVに、4気筒ターボ版が登場。販売主力グレードを、英国編集部が一般道で評価しました。

正確な操舵感と優れた身のこなし

試乗したマセラティグレカーレ GTには、標準装備となるスチールコイル・サスペンションの代わりに、オプションのエア・サスペンションが組まれていた。トロフェオと同様に、その姿勢制御は基本的には優れるものの、気になる点もゼロではない。

乗り心地の基調にはソフトさがあり、ロードノイズや風切り音の小ささと相まって、長距離クルージングを安楽にこなすことができる。高級サルーンのように、大きな起伏部分も滑らかにいなしつつ、適度なコシも感じられる。

マセラティ・グレカーレ GT(欧州仕様)
マセラティ・グレカーレ GT(欧州仕様)

その反面、舗装が剥がれた深めの穴などを通過すると、サスペンションから強めの衝撃が伝わってくる。足まわりからのノイズも、ほかが静かなだけに目立ってしまう。

英国の市街地のように段差や継ぎ接ぎが多い舗装では、平穏を保ちにくいだろう。大径の20インチ・アルミホイールも、サスペンションの仕事量を増やしているようだ。

コーナーが連続する区間では、SUVとしての制限はあるものの、優れた身のこなしを発揮する。ただし、残念ながら試乗車には柔らかいスタッドレスタイヤが履かされていた。気温は24度もあったのだけれど。

ステアリングホイールの操舵感は、明瞭で正確。車重が重く車高が高いグレカーレながら、意欲的に回頭していく。

ドライブモードをスポーツへ引き締めれば、四輪駆動システムが積極的にトルクをリアタイヤへ分配。アクセルペダルの操作で、フロントノーズの向きを調整できる。腕利きのドライバーも、楽しいと感じられるはず。

特別感が漂い、余裕のあるインテリア

ボディロールは良く抑え込まれており、姿勢制御は適度にタイトで乱れにくい。それでも、コーナーの途中に隆起部分などがあると、軽くない車重をダンパーが受け止めきれなくなり、まとまり感に陰りが出てしまう。

スポーツ・モードでも、ピタリと落ち着いたマカンの水準には届いていない。マセラティとして、本質的なDNAにはバランスの取れた機敏な性格が宿っているだけに、少し惜しい。ブレーキの性能には、まったく不満がないのだけれど。

マセラティ・グレカーレ GT(欧州仕様)
マセラティ・グレカーレ GT(欧州仕様)

プレミアム・ファミリーSUVという視点でグレカーレ GTを見ると、仕上がりは上々。Dセグメント・モデルとして車内空間は不足なく広い。リアシート側は、マカンより明らかに余裕がある。

マイルド・ハイブリッド化に伴い荷室に駆動用バッテリーが追加され、荷室容量は535L。グレカーレ・トロフェオの570Lより狭いものの、一般的な使い方で不足することはないだろう。

内装の仕立てには、特別感が漂う。肌触りの良いレザーがふんだんに用いられ、ダッシュボードには大きなタッチモニターが据えられる。デザインも上質で、インフォテインメント・システムのインターフェイスもわかりやすい。

だが、素材の一部には質感で詰めの甘い部分もある。スイッチ類の感触も、隅々まで煮詰められているとまではいえない。全体的な印象が良いだけに、気になってしまった。

試乗車の内装からは、荒れた路面できしみ音も出ていた。量産が進めば改善する可能性はあるが、ポルシェ級の厳格な品質管理に迫ることはできるだろうか。

記事に関わった人々

  • 執筆

    ジェームス・ディスデイル

    James Disdale

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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