素質の高さが顕に トヨタGRヤリス・イベリアンカップへ試乗 ワンメイクラリー・マシン
公開 : 2022.05.12 08:25 更新 : 2022.11.01 08:50
遥かに生々しく、軽く、より繊細
公道用のGRヤリスとは異なり、深いバケットシートとロールケージが組まれているため、GRヤリス・イベリアンカップへの乗り降りは少々難しい。身体を曲げてシートへ腰を下ろすと、通常のヤリスとは異なるドライビングポジションに気づく。
明らかに座面位置が低い。通常のGRヤリスは少々高すぎた。フロアに近い位置へ座っているから、常に視界に入っていたバックミラーが邪魔にならない。
発進は、拍子抜けするほど簡単。クラッチはつなぎやすく、ステアリングホイールは指先で回せるほど軽くダイレクト。運転席からの視界も良い。
基本的には、イベリヤン・カップのメカニックがクルマをセッティングしてくれる。ドライバーが気を揉むような装備は、何ひとつない。
フロントタイヤの切れ角はそのままだが、スピードが乗ると自由度も増すため、これ以上は必要ない。6速MTには、レブマッチ機能が残されている。
アクセルペダルを踏み込むと、傍若無人な個性が顕になる。カップ・マシンは遥かに生々しく、軽く、より繊細に操縦できる。路面に砂が浮いたグラベルコースを、衝撃的な勢いで加速していく。
最高出力260psと、最大トルク36.7kg-mという数字に変わりはない。それでも、スリップしながら加速できるし、コーナーでは小石を撒き散らしながらスライドできる。
シャシーは僅かにアンダーステア基調ながら、タイトコーナーでは、アクセル操作に対して鋭くも病みつきになるオーバーステアで反応。クスコ社製のLSDの効能が、存分に発揮される。
GRヤリスの素質の高さへ気付く
ハンドブレーキ・ターンも自在ながら、クイックな身のこなしで、極めてきついヘアピン意外は必要なかった。それ以外のコーナーでは、軽いきっかけを与えてやれば、鋭くボディをスイングしながらノーズがインへ食らいつく。
ダートタイヤが砂埃を巻き上げる。バラバラと小石がボディシェルへ当たる大騒ぎの中、勢いよく短いストレートめがけて加速していく。
3周ほど走ると、カップ・マシンとすっかり親しくなれた。ステアリングホイール上部の黄色いマーカーは、ほとんど左右に倒れたまま。12時を指すのは、ごく僅かな時間でしかない。安定性が担保されつつ、自在に操れる。ひたすら楽しい。
タイヤのグリップ力にも驚かされるが、どこまで路面を掴ませ、どこからスライドさせるかは、アクセルペダルの踏み方次第。長いサスペンションのストローク量と、軽量化されたボディシェルが、その自由度を高めている。
GRヤリス・イベリアンカップの高い能力を発揮させるには、妥当なステージが必要になる。ラリーイベント以外で存分に楽しむことは、現実的には難しい。
同時に、トヨタGRヤリスの素質の高さにも気付かされた。ボディを軽量化し、サスペンションのストロークを少し長くするだけで、郊外の道を一層爽快に疾走できそうだ。
トヨタ・ガズーレーシング GRヤリス・イベリアンカップ(欧州仕様)のスペック
欧州価格:6万5800ユーロ(約894万円)
全長:3995mm(標準GRヤリス)
全幅:1805mm(標準GRヤリス)
全高:1455mm(標準GRヤリス)
最高速度:225km/h(予想)
0-100km/h加速:5.0秒(予想)
燃費:−
CO2排出量:−
車両重量:1280kg
パワートレイン:直列3気筒1618ccターボチャージャー
使用燃料:ガソリン
最高出力:260ps/6500rpm
最大トルク:36.7kg-m/3000-4000rpm
ギアボックス:6速マニュアル