EVは「効率が良い」ってホント? ガソリン車や家電製品と比較してみた結果
公開 : 2022.05.03 06:05
電動化が進む中、よく言われるのが「EVは効率が良い」ということ。それがどれほどのものか、調べてみました。
そもそもエネルギーとは何か
EVを購入する理由の1つに、「ランニングコストが安くなること」が挙げられる。EVはエネルギーの効率的な利用が可能だからだ。しかし、それは誰が言ったのだろうか?本当にそうなのだろうか?ここで一度、立ち止まって考えてみよう。
EVを従来の内燃機関自動車(ICE車)と比較する場合、用語が変わるので理解しづらいことがしばしばある。例えば燃費(電費)の場合だと、「km/l」と「kWh/km」を比較しなければならない。多くのドライバーを悩ませる原因の1つだ。また、EVの「効率」は、我々が日常的に使っている他の電化製品と比べてどうなのかも、気になるところである。
そもそもエネルギーとは何なのか?
学校の教科書を開くと、「エネルギーとは仕事をする能力である」というようなことが書いてある。ガソリンもディーゼルも電気も、エネルギーを含んでいて、それを別の形のエネルギーに変換できることから「エネルギーキャリア(エネルギーを運ぶもの)」と呼ばれる。
EVの場合、電気エネルギーをどれだけクルマを動かすため力に変換できるかが、効率の良さを決める。ガソリンや軽油も同じで、電気ポットも同じことが言える。電気ポットが消費するエネルギーのうち、実際にお湯を沸かしてくれているのはどれくらいなのだろうか?
ガソリンと電気はぢお
EVとICE車の効率の比較は簡単だ。EVが圧倒的に優れている。
内燃機関は、燃料を熱に変換し、膨張したガスがエンジンの動力となる仕組みである。その熱の半分以上が無駄になっており、どんなに優れたガソリンエンジンでも、燃料のエネルギーの40%程度しか「仕事」に変えられないため、残りの60%は廃熱となる運命にある。つまり、ガソリンや軽油に1000円使っても、実際にクルマを動かすのに使われているのは500円にも満たないのだ。
一方、EVの電気モーターは、消費する電気エネルギーの90%以上を有効な仕事に変換するため、その効率は90%以上となる。さらに、電気モーターはクルマを動かすのに使ったエネルギーの一部を、減速時に発電・回収することができるので、効率はさらに向上する。
1994年、ガソリンのエネルギーと代替燃料を比較するための計算式として米国標準技術研究所(NIST)が考案した「ガソリン・ガロン換算(GGE)」は、内燃エンジンと電気駆動装置の効率の差を示すのに有効なツールである。
GGEによると、1ガロン(約3.8L)のガソリンは40kWh強の電気に相当するエネルギーを含んでいる。つまり、64kWhのバッテリーを搭載した一般的な中型EVは、1.6ガロン(約6L)のガソリンとほぼ同じ量のエネルギーを搭載していることになる。
このEVと同サイズの1.5Lガソリン車なら、燃費は23km/lと見ていいだろう。この場合、1.6ガロンでおよそ140km走れることになる。64kWhのEVは、現実的な6km/kWhで計算すると、ほぼ380kmを走行することになる。240kmの差は、電気パワートレインの効率と回生ブレーキで回収されるエネルギーによるものだ。
ハイブリッド車やプラグインハイブリッド車は、回生ブレーキによるエネルギー回収を行ったり、加速時に内燃機関を補助したりするなど、さまざまな方法で効率を高めている。しかし、ハイブリッドの「原動力」は依然として内燃機関であり、電気パワートレインと比較すると非効率であることに変わりはない。