BMW 428i ラグジュアリー・コンバーチブル

公開 : 2014.06.29 18:00  更新 : 2017.05.29 17:59

■どんなクルマ?

428iとスペックを同じくする、4シリーズ・ファミリーのコンバーチブル版である。したがって組み合わされるエンジンは2.0ℓの4気筒ターボとなり、最高出力の245psは8速のオートマティック・トランスミッションを介して後輪駆動へと伝えられる。

このエンジンは4シリーズ・コンバーチブルに用意されるエンジンのちょうど真ん中に位置し、この上に306psを発揮する435iの直6ターボが、そしてこの下には420dの184psを発揮する2.0ℓのディーゼル・ターボがある。

E93の3シリーズ・コンバーチブルが先代にあたり、全長が+26mm、ホイール・ベースは+50mm、全高は-10mmの変更を受け、幾ばくかのトレッド拡大とともに、より接地感のある、走りを意識させる仕立てとなっている。

ただし、4シリーズのもつ優雅なボディ・ラインをコンバーチブルにも見ることはできない。というのも3ピース構造のルーフ・ラインが少しばかり美しさをスポイルしているからである。

その代わり、E93コンバーチブル(こちらも電動ハード・トップを採用していた)よりも、ねじれ剛性が40%増加し、重量も20kg軽くなった。それでも1775kgの乾燥重量は、クーペのそれよりも230kg重く、またファブリック地のルーフを採用したアウディ・A5カブリオレからは115kgも重いということは忘れてはならない。

ルーフを閉じた状態だと、全車重のうち53.4%(MTの場合は54%)がリア・アクスルに掛かることになるのだが、リア・サスペンションがわずかに強化されているため、前後の値が異なる重量配分が動力性能に影響を及ぼすことは最小限に抑えられている。

エントリー・レベルのモデルにも、前後ともにパーキング・センサーが装着され、レザー内装やフロントシート・ヒーター、カラー6.5インチ・スクリーン、動力性能を引き出すことのできるDPC(ドライブ・パフォーマンス・コントロール)が気前よく装備されている。

テストに借りだしたラグジュアリー版はエントリー版の£38,570(571万円)よりも£2,500(37万円)高となり、こちらの場合は18インチ・アロイ・ホイールやスポーツ・シート、衛星ナビゲーション・システム、クロームやウッドの装飾が奢られる。

■どんな感じ?

内装は基本的に3シリーズから多くを引き継いでいるため、美しいというよりもスマートで効率的といったところだが、ドライバーズ・シートのポジションとエルゴノミクスは賞賛に値する。

後部座席は、ホイール・ベースが拡大したといえども相変わらずタイトで、ルーフを閉じた状態だと身長の高い大人にとっては足元と頭上ともに苦戦を強いることになるはずだ。少なくとも心温まる室内空間とは言いがたい。

トランク・ルームの容量は申し訳程度の220ℓ、またルーフをトランクに格納した場合は150ℓにまで縮小される。しかしながらこの値はアウディ・A5カブリオレのそれより僅か10ℓだけ小さいだけに留まっているということは忘れてはならない。

ルーフの開閉には20秒かかり、13km/hまでなら走行中でも開閉することができる。一方A5の場合はもっと早く開閉することができるし、48km/h以下で動作可能となる。またBMWの場合は複雑な機構ゆえに開閉時の動作音も耳につく。

ただしルーフを閉じた状態だと、2500rpm前後のエンジン音がほとんど耳に入ってこないところから、剛性と静粛性がとても高いことを室内から窺い知ることができる。

しかし市街地にてルーフを開け放った状態で走行した時には状況は一変する。マフラーからは低く唸るようなエグゾースト・ノートや、ターボ特有の音、またシフト・チェンジ時の破裂音も聞こえてくるからである。したがってオープン・ツアラーのもつ優雅さよりも、どちらかと言うと激しい印象だと言えるだろう。

モーターウェイに持ちだした時の印象は素晴らしい。£265(4万円)のウインド・ディフレクターのお陰で110km/h前後でも会話することができるし、8速ATはDPCをコンフォートにした時は滑らかに、スポーツにした時は瞬時にシフト・チェンジを行ってくれる。

ただし£250(3万7千円)もする不要ともいえる可変スポーツ・ステアリングだけでなく、均等でない重量配置によって起こるバランスの悪さや、屋根を開けた時の剛性感の低さなど無視できない欠点が残るのも事実だ。

高速コーナーにおけるロールはうまく抑えられているのだが、心地良いかと問われればイエスとは言いがたく、屋根の開かない兄弟車と比べると接地感に欠ける。小さな隆起が続くコッツウォルズの路面では、明確にサスペンションがバタバタと音を立てていたし、その大部分がステアリングにも伝わってきた。

■「買い」か?

動力性能に欠け、高速域での落ち着きの無さを受け入れることができるのならば購入する価値はあるだろう。ただしその双方が、英国の道路では大きな欠点になりうることは心に留めておくべきだ。

420dはわずかに安く経済性も高いのだが、こちらもまた洗練という意味合いにおいては同様の欠点を残している。そう考えると、高価ではあるがスムーズに駆け抜けることのできる4シリーズのエンジンが魅力的に写ってくるかもしれない。

アウディ・A5の場合、225psの2.0ℓTFSIマルチトロニックならば、わずかに遅くはなるものの428iに比べて軽量でCO2排出量も少ないし、£1600(24万円)以上安価である。ただし、BMWの方がアウディよりもモダンで洗練されているのも事実だ。そうなると議論はより複雑になっていく。

最終的には、貴方自身がBMWの与えてくれる’洗練’に対していくらまで支払うことができるかだと言えよう。

(リチャード・ウェーバー)

BMW 428i ラグジュアリー・コンバーチブル

価格 £41,070(710万円)
最高速度 237km/h
0-100km/h加速 6.4秒
燃費 15.2km/ℓ
CO2排出量 254g/km
乾燥重量 1775kg
エンジン 直列4気筒1997ccターボ
最高出力 245ps/5000-6500rpm
最大トルク 35.7kg-m/1250-4800rpm
ギアボックス 8速オートマティック

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