素晴らしき3種の英国スポーツ トライアンフ・スピットファイア MGB ロータス・エラン 後編

公開 : 2022.05.22 07:06  更新 : 2022.08.08 07:11

1960年代に1つの絶頂期を迎えた英国スポーツ。スピットファイアとMGB、エランの魅力へ英国編集部が迫ります。

フレイリングによる時代を超越した美しさ

ロータスエランのエンジンは、4気筒のツインカム。レーシングカーのロータス23も搭載した、フォード由来の傑作ユニットが搭載されている。

ヘッドの設計を手掛けたのは、技術者のハリー・マンディ氏。当初は、フォードの109Eブロックと組まれる前提だった。

ブリティッシュ・グリーンのロータス・エラン 1600と、パウダー・ブルーのトライアンフ・スピットファイア 4、ライトブルーのMGB
ブリティッシュ・グリーンのロータス・エラン 1600と、パウダー・ブルーのトライアンフ・スピットファイア 4、ライトブルーのMGB

フォードがパワフルな116E型、通称ケント・ユニットを導入すると、チャップマンはエランへ採用。排気量は最初期の22台が1498ccだったが、後に1558ccへ拡大されている。

シンプルでスリムなボディをデザインしたのは、ジョン・フレイリング氏。時代を超越した美しさがある。

チャップマンもまた、北米市場の重要性を認識していた。ロールス・ロイスの生産技術者を務めていたジョン・コープ・ルイス氏を招き入れ、輸出に対応できる品質管理を任せた。

それでも生産初期のクルマは、ウインドウのフィット感が不十分で、ボディ内への雨漏りも少なくなかった。エンジンは、コンロッドの不具合を抱えていた。いずれも1964年のS2で、改善されている。

エランの発表は、1962年10月のロンドン・モーターショー。新車時の価格は、1499ポンドと手頃ではなかった。オースチンヒーレー3000より、200ポンドも高かった。

今回登場願ったブリティッシュ・グリーンのエランは1964年式だが、切り替え前のS1。当初ドイツへ輸出されたものの、1998年に英国へやってくると、入念なレストアと右ハンドルへのコンバージョンを受けている。

カーブの続く一般道との相性は抜群

エンジンは147psを発揮するQED420仕様を搭載。調整式サスペンションによって僅かに車高が落ち、見た目はずっと端正だ。実際に走らせてみると、ほぼ60才らしい趣を感じた。

バケットシートの位置は低く、ウッドリムの3スポーク・ステアリングホイールの奥に、4枚のメーターが並んだシンプルなダッシュボードが構える。グッドウッド・サーキットを、オープン状態で疾走する。

ブリティッシュ・グリーンのロータス・エラン 1600と、パウダー・ブルーのトライアンフ・スピットファイア 4
ブリティッシュ・グリーンのロータス・エラン 1600と、パウダー・ブルーのトライアンフ・スピットファイア 4

ツインカム・ユニットが鋭く吹け上がり、回転数に合わせて2基のウェーバー・キャブレターが吸気音を高める。音響的な刺激に不足はない。

フォード社製の4速MTは、コクリという感触が伴う。ストロークは短く、機械的な質感がたまらない。理想の走りを引き出すには、2500rpm以上の回転数を保ちたい。

乗り心地は硬めで、姿勢制御はタイト。ハイギヤードのステアリングラックを通じ、驚くほどのフィードバックが手のひらへ伝わる。

トランスミッションのギア比は低く、4速でも1000rpm当たり32km/hほど。カーブの続く英国の一般道との相性も抜群。目的地までのドライブが、退屈に感じることはないだろう。

他方、177 CRXのナンバーをぶら下げたトライアンフ・スピットファイアは、1962年10月に製造されたシャシー番号FC301。現在オーナーはジェズウッズ氏で、1980年代から大切に40年近くも維持しているという。

4年前にトライアンフを専門とするジグソー社によって、フルレストアを受けている。その時に、パウダー・ブルーというオリジナルのボディカラーで仕立て直された。

記事に関わった人々

  • 執筆

    サイモン・ハックナル

    Simon Hucknall

    英国編集部ライター
  • 撮影

    リュク・レーシー

    Luc Lacey

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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