ポルシェの魅力を1つに凝縮 ガンザーワークス993 スピードスター・リマスタードへ試乗 前編

公開 : 2022.05.13 08:25

空冷フラット6を積んだ993型911カブリオレを、徹底的にレストモッド。見事なバランスに、英国編集部は惹き込まれたようです。

金銭的縛りから開放されたレストモッド

アメリカ・カリフォルニア州にあるガンザーワークスの本社ビルは、白で統一され清潔だった。広々としていて、エアコンが効いていた。

創業者のピーター・ナム氏は、ヴォルシュタイナー社という、アルミホイールやカーボンファイバー製部品の製造メーカーも経営している。クルマへ掛ける情熱は人一倍大きい。

ガンザーワークス993 スピードスター・リマスタード(北米仕様)
ガンザーワークス993 スピードスター・リマスタード(北米仕様)

内部はいくつかのエリアに分割され、裕福なオーナーが特別な1台を受け取る未来的な部屋もある。ただし、ガンザーワークス社はクルマ自体の生産は行っていない。1994年から1998年にかけて生産された、993型ポルシェ911 カレラ2が主な仕事の対象だ。

今回の例のように、オーナーがポルシェを持ち込むと独自のモディファイを加えて、993 スピードスター・リマスタードへ仕立ててもくれる。金銭的な縛りから開放された、993型の徹底的なレストモッドともいえる。

ナムが手掛ける内容は、空冷フラット6を搭載した最後の911、993型をベースにポルシェがGT3 RSを生み出した手法にも似ている。順調に作業は進んでおり、993 スピードスターの販売台数は25台の限定。993 クーペも別に25台が作られる。

この993 スピードスターを製作するには、ベースとなる993型911のカブリオレかクーペが不可欠。ガンザーワークス社は、その調達をサポートしてくれるという。事故歴のない純正状態がベストで、現在は6万ポンド(約1002万円)近い値段が付いている。

トレッド拡大と軽量化でバランスを改善

数は限定的とはいえ、北米の中古車市場には困らない数の993型が流通している。手配が整い次第、レストモッドがスタート。大幅な軽量化と、様々なチューニングが施される。

この993 スピードスターで注目したいポイントの1つが、フロント・トレッドの拡大だろう。また、エアコンのコンプレッサーとパワーステアリング・ポンプは、エンジン駆動ではなく電動化され、フロント側へ移設される点も注目だ。

ガンザーワークス993 スピードスター・リマスタード(北米仕様)
ガンザーワークス993 スピードスター・リマスタード(北米仕様)

ドア以外、すべてのボディパネルは独自のカーボンファイバー製へ一新される。フロントバンパーがワイド化されることで、オイルクーラーは2基収まる。空気の流れに沿って、正面に据えられている。

ガンザーワークス社とヴォルシュタイナー社は、ともに製造メーカーであり、部品の設計から生産まで円滑に行える。エンジンとトランスミッションは別のようだが。最終的には、通常の993型から250kgを削ぎ落とし、車重は1235kgになるという。

前後の重量配分は、45:55でややリア寄り。それでも、従来的なリアエンジンの911らしいドライビング特性の改善に注力されている。バランスに優れ、コーナーの出口でも挙動は穏やからしい。

一般的にシャシーの前後へ大幅に手を加え、剛性や動作の周期を変えることは、技術者の頭を悩ませる。ポルシェ911と、その個性が大好きだという人なら特に。だが彼らは、バランスさせることを目的にチューニングを施している。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マット・プライヤー

    Matt Prior

    英国編集部エディター・アト・ラージ
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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