期待のワンモーション・グリップ レクサスRZ 450e 純EVの試作車へ英国試乗 後編
公開 : 2022.05.16 08:26
トヨタの上級ブランド、レクサス初となる純EV専用モデルの試作車。英国編集部が新技術の仕上りを確かめました。
少しの癖はあるものの、落ち着いた走り味
バイワイヤーによるステアリング・システム、ワンモーション・グリップを採用するレクサスRZ 450e。気になる癖はゼロではない。
低速域では、丁寧に操縦桿風のステアリングホイールを傾ける必要がある。突然操作すると、フロントタイヤの舵角が急に増え、ボディが大きく揺さぶられることがある。
一度に多くの舵角を求めると、少し反応が遅れるようでもあった。コンピューターが多くのコマンドを処理するのに、一瞬のタメを作るのと同様に。滑りやすい路面やテールスライド時のカウンターステアでは、ステアリングが非常に重くなる場面も見られた。
これらの癖は、かつて同等のシステムを採用したインフィニティでも感じたこと。レクサスの技術者も、この動作は認識しているという。トヨタのスポーツカーにワンモーション・グリップが搭載されるまでには、もう少しの技術開発が必要のようだ。
ただし、試乗したRZ 450eはまだプロトタイプであり、走行できた場所も滑らかなサーキットのみ。最終的な評価は、この状態では難しい。従来的なステアリングラックを搭載したRZの操舵感が驚くほど軽く、曖昧だったことは確かではある。
新しいステアリング・システムにレポートの行数を割いてしまったが、RZが安定していて落ち着いた走り味だったことは間違いない。リアの駆動用モーターは、コーナリング時に積極的にトルクを生み出し、ラインを内側に絞り込むことも難しくなかった。
プロトタイプながら全体の印象は良好
ペースを速めていくとアンダーステアが顔を出すが、基本的に挙動は乱れず、フラットに旋回していく。タイヤの幅は、フロントが235でリアが255だった。
駆動用モーターのノイズは小さく、ロードノイズや風切り音もしっかり抑えられている。走行時の質感は、とても洗練されている。
サスペンションは、しなやかに路面の凹凸を処理していた。シャシー構造を通じて車内に揺れが侵入するのは、深いワダチを横断するような場面のみ。そんな時には、サスペンションの振動も感取された。
車内空間は広々としている。ボディサイズは、レクサスNXとRXの中間に当たるという。ホイールベースはRXより長く、パッケージングでは有利といえる。実際、リアシート側の足元空間はより広いそうだ。
RXが採用する装備で目新しいのは、電子的に透過率を変えられるパノラミック・グラスルーフ。また前席の前方下部には、エネルギー効率の良い輻射式ヒーターが設けられ、冬場でも限られた電気を浪費せずに済む。
ダッシュボードの中央には、14.0インチの大きなインフォテインメント用タッチモニターが鎮座する。表示は高精細で、インターネットとの接続機能も備わるという。
量産化前のプロトタイプではあったが、RZの印象は良好。チューニングの余地はあるものの、軽快に走り、落ち着きがあり、快適だった。レクサスらしく、洗練度は高い。