メルセデス・ベンツCクラス 詳細データテスト 競合車を引き離すEV航続距離 強みは走りより洗練性

公開 : 2022.05.14 20:25  更新 : 2022.06.21 13:20

意匠と技術 ★★★★★★★★☆☆

Cクラスとしては5代目にあたるW206型は、モジュラー・リア・アーキテクチャーの第2世代、MRA IIをベースとしている。現時点で、これを用いるモデルは現行のCクラスとSクラスのみだ。

これこそ、シュトゥットガルトが強く訴えたいことだ。これまでも、フラッグシップサルーンに用いられた技術を、最量販セダンへ下げ渡すことの効果を、彼らは声高に主張してきた。とはいえ、先代のSクラスとCクラスもプラットフォームを共有していたので、メルセデスのこれまでを見てきたひとならば、これは予想できたはずだ。

W206型Cクラスは、4気筒+9速ATのみのラインナップ。C300eは、エンジンとギアボックスの間に駆動用モーターを、荷室フロア下に駆動用バッテリーを搭載する。
W206型Cクラスは、4気筒+9速ATのみのラインナップ。C300eは、エンジンとギアボックスの間に駆動用モーターを、荷室フロア下に駆動用バッテリーを搭載する。    LUC LACEY

W206は、W205より少しだけ大きくなったが、縦置きエンジンの後輪駆動ベースという、このカテゴリーの伝統的レイアウトを踏襲している。内燃エンジンはすべて4気筒で、48Vマイルドハイブリッドでアシストしている。

1.5Lガソリンターボは、エントリーレベルのC180に搭載される170ps版と、C200の204ps版を設定。259psのC300と、今回テストするC300eは、2.0Lガソリンターボだ。ディーゼルは200psのC220dと265psのC300dで、搭載するのはOM654型2.0Lユニットの改修版。新型クランクシャフトと、ISGことインテグレーテッド・スターター・ジェネレーターを装備する。

トランスミッションは、すべてのモデルで9速ATを採用。PHEVのC300eは、129psの永久磁石励起式モーターを組み込み、140km/hまで駆動力を発生する。駆動用リチウムイオンバッテリーは先代C350eより小型化しつつも、容量は2倍近い25.4kWhとなった。スリムになったバッテリーパックにより、荷室フロアは段差がなくなりフラット化されている。

とはいえ、重さはいかんともしがたい。今回は計測できなかったが、公称の空車重量は2005kgで、これはBMW330eを235kg、DS 9のPHEVモデルを166kg上回る。もっとも、2台ともバッテリー容量はC300eの半分にも届かないが。

C300eのサスペンションは、Cクラスのほかの中間グレードとはいささか異なっている。AMGラインのみの設定だが、他グレードのAMGラインに装着されるローダウン仕様のスポーツサスペンションは備えないのだ。また、フロントはコイルスプリングだが、駆動用バッテリーで重量の増したリアにはセルフレベリング機能付きエアスプリングを装備し、より緊密なボディコントロールを目指している。

ほかのAMGラインにも採用されるプログレッシブギアのステアリングは装備されるが、今後投入されるC43やC63に用意される四輪操舵とのセットは選択できない。ホイールは空力デザインが施された18インチで、タイヤは前後で幅が異なる。銘柄は、効率重視のミシュラン・プライマシー4だ。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マット・ソーンダース

    Matt Saunders

    役職:ロードテスト編集者
    AUTOCARの主任レビュアー。クルマを厳密かつ客観的に計測し、評価し、その詳細データを収集するテストチームの責任者でもある。クルマを完全に理解してこそ、批判する権利を得られると考えている。これまで運転した中で最高のクルマは、アリエル・アトム4。聞かれるたびに答えは変わるが、今のところは一番楽しかった。
  • 執筆

    イリヤ・バプラート

    Illya Verpraet

    役職:ロードテスター
    ベルギー出身。AUTOCARのロードテスターとして、小型車からスーパーカーまであらゆるクルマを運転し、レビューや比較テストを執筆する。いつも巻尺を振り回し、徹底的な調査を行う。クルマの真価を見極め、他人が見逃すような欠点を見つけることも得意だ。自動車業界関連の出版物の編集経験を経て、2021年に AUTOCAR に移籍。これまで運転した中で最高のクルマは、つい最近までトヨタGR86だったが、今はE28世代のBMW M5に惚れている。
  • 撮影

    リュク・レーシー

    Luc Lacey

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    関耕一郎

    Kouichiro Seki

    1975年生まれ。20世紀末から自動車誌編集に携わり「AUTOCAR JAPAN」にも参加。その後はスポーツ/サブカルチャー/グルメ/美容など節操なく執筆や編集を経験するも結局は自動車ライターに落ち着く。目下の悩みは、折り込みチラシやファミレスのメニューにも無意識で誤植を探してしまう職業病。至福の空間は、いいクルマの運転席と台所と釣り場。

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