メルセデス・ベンツCクラス 詳細データテスト 競合車を引き離すEV航続距離 強みは走りより洗練性

公開 : 2022.05.14 20:25  更新 : 2022.06.21 13:20

走り ★★★★★★★★★☆

このクルマは重量2tのCクラスかもしれないが、発進ではその重量を苦もなく引き受ける。寒い日の、湿ってすべりやすいプルービンググラウンドで、C300eは十分なトラクションとドライバビリティを発揮し、0-97km/hは6秒を切るのだ。そのために特別な操作は必要ない。せいぜい、やや軽めにスロットルを踏み込むくらいだ。

もしも天候や路面のコンディションが万全なら、5.5秒を出せたに違いない。となれば、ほとんどの競合車をコンマ5秒は凌ぐということになる。

動力性能は、6気筒ディーゼルも一目置くほど。しかし、このクルマの本分は、普通に走らせたときのメルセデスらしい上質さにある。あまり飛ばすと、エンジンの粗さが気になってしまう。
動力性能は、6気筒ディーゼルも一目置くほど。しかし、このクルマの本分は、普通に走らせたときのメルセデスらしい上質さにある。あまり飛ばすと、エンジンの粗さが気になってしまう。    LUC LACEY

追い越し加速のパフォーマンスは、多気筒ディーゼルを積む同クラスのセダンに匹敵する。ただし、電気モーターが最大トルクを瞬間的に発生させることで、レスポンスやメカニカルな洗練性では上を行く。

だから、Cクラスにもはや6気筒は必要ないというメルセデスの主張も、ある意味では間違っていない。4速での48-113km/hは6.5秒に過ぎず、2020年にテストした6気筒ディーゼルのBMW 330dツーリングはこれより0.7秒速かったのみだ。

そうはいっても、C300eの本当の売りは速さではない。むしろ、ゆったりとしたドライバビリティやクルージングでの優れたマナーにある。その走りの質は、メルセデスのブランドには申し分なく合致しているように思える。

2.0Lエンジンは、普段から熱狂的に回るユニットではないが、控えめなクルージングでは落ち着いている。9速ATは、クルマへの要求が強くなったときにはシフトダウンが遅いようにも思えるが、普通に走っていれば変速の流れを妨げるようなことなく、いい作動ぶりをみせてくれる。

複雑なパワートレインであることに疑いの余地はないが、メルセデスはその複雑さを望みのままに扱えるよう仕立てた。レーダーをベースにしたシステムとしては、クルーズコントロールは備わらないが、自動エネルギー回復機能は標準装備される。これにより、トランスミッションをDオートに入れておけば、スロットルが開いていないときに、前方の道路状況に応じてコースティングや回生を行ってくれるのだ。

このシステムに慣れて、信頼を置きさえすれば、じつにいい働きをみせてくれる。とはいえ、そこを機械任せにするのに嫌気がさしたら、ステアリングコラムに装着されたシフトパドルで、コースティングを最大限使うD+か、ワンペダル運転が可能なD−か、いずれかのモードを選択できる。そうすれば、より予想しやすく一貫したオペレーションをするようになる。

メルセデスではおなじみのダイナミックセレクトはトップレベルのものが採用され、スポーツモードではおそらく期待されるとおり、パドルでギアの選択ができる。

たしかに、パフォーマンスそのものは強力だ。とはいえ、エンジンは回転を上げると粗くておもしろみがないものになり、ドライバーの熱意を削いでしまう。また、ブレーキペダルのフィールは、軽くてフワフワしている。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マット・ソーンダース

    Matt Saunders

    役職:ロードテスト編集者
    AUTOCARの主任レビュアー。クルマを厳密かつ客観的に計測し、評価し、その詳細データを収集するテストチームの責任者でもある。クルマを完全に理解してこそ、批判する権利を得られると考えている。これまで運転した中で最高のクルマは、アリエル・アトム4。聞かれるたびに答えは変わるが、今のところは一番楽しかった。
  • 執筆

    イリヤ・バプラート

    Illya Verpraet

    役職:ロードテスター
    ベルギー出身。AUTOCARのロードテスターとして、小型車からスーパーカーまであらゆるクルマを運転し、レビューや比較テストを執筆する。いつも巻尺を振り回し、徹底的な調査を行う。クルマの真価を見極め、他人が見逃すような欠点を見つけることも得意だ。自動車業界関連の出版物の編集経験を経て、2021年に AUTOCAR に移籍。これまで運転した中で最高のクルマは、つい最近までトヨタGR86だったが、今はE28世代のBMW M5に惚れている。
  • 撮影

    リュク・レーシー

    Luc Lacey

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    関耕一郎

    Kouichiro Seki

    1975年生まれ。20世紀末から自動車誌編集に携わり「AUTOCAR JAPAN」にも参加。その後はスポーツ/サブカルチャー/グルメ/美容など節操なく執筆や編集を経験するも結局は自動車ライターに落ち着く。目下の悩みは、折り込みチラシやファミレスのメニューにも無意識で誤植を探してしまう職業病。至福の空間は、いいクルマの運転席と台所と釣り場。

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