販売もシェアもしない? 自動車メーカーが考える新しいモビリティの「あり方」とは
公開 : 2022.05.13 18:05
カーシェア事業は儲からず、自動運転タクシーは遠い未来の話……。これからの自動車ビジネスのあり方を探ります。
変化するビジネスモデル ルノーの展望は
「世界のほとんどの地域では、人々はまだ自分のクルマを所有したがっています」
ルノーの新ブランド「モビライズ」のクロチルデ・デルボスCEOは、今週行われた新車発表会でこのような発言をした。クルマを所有したがらない人々にどう向き合うか、がテーマとなった同発表会において、この発言はいささかトリッキーなものに聞こえた。
しかし、ルノーで最高財務責任者を務めた経歴を持つデルボスは、決して話を誇張したわけではない。
自動車メーカーは、クルマの所有に否定的でありながらクルマを利用したがっている人々に対して、何を提供するべきなのか模索しているところだ。モビリティビジネスは、複雑に変化しようとしている。
例えば、かつてモビリティ革命の中心的なテーマであった自動運転タクシーの話題は、今やすっかり冷え込んでいる。「多くの人が、自動運転サービスの普及は2028年、2030年、あるいはその先の話だと言っています」とデルボス。
カーシェアリングに対する野心も、以前ほどの熱を帯びていない。BMWとメルセデスは先週、数年にわたる赤字を受け、共同のカーシェアリング事業である「シェアナウ(ShareNow)」をステランティスに売却することを発表している。
事業者向けにクルマをリース 新しいシェアリング体系
モビライズは2023年、2人乗りのEV「デュオ(Duo)」を発売し、カーシェアリングの世界に飛び込む予定だが、「オペレーターではなく後援者として」の参入であるという。つまり、ルノーの既存のカーシェアリング事業「Zity」と異なり、主にカーシェアリング事業者向けにクルマを貸し出すということだ。
モビライズによると、新型デュオは一般的な4人乗りのクルマと比べて運用コストを35%削減できるほか、洗えるシート(取り外し可能)や傷を目立たなくする特殊なカラーパターンの樹脂製バンパーを採用するなど、汚損しやすいシェアカーに適した設計になっているという。
乗用タイプのデュオと、商用タイプのベントの2種類を「モビライズ・シェア」と呼ばれるスキームで運用するが、これは街中を自由に移動するのではなく、既存のルノー・ディーラーを拠点とするため、従来のレンタルに近いものになる。
モビライズにとって2台目のモデルとなる「リモ(Limo)」は、全長4.6mの小型EVセダンで、Uberなどのライドシェア(配車サービス)事業者やそのドライバーに貸し出される予定だ。これも従来のカーシェアリングとは異なる体系で運用される。3台目のモデルは、「ヒポ(Hippo、ベースとなるのはEZ-Flexコンセプト)」と呼ばれる電動配送バンで、2026年に登場する予定だ。