販売もシェアもしない? 自動車メーカーが考える新しいモビリティの「あり方」とは

公開 : 2022.05.13 18:05

カギを握るファイナンス クルマは金融商品に?

モビライズの事業の核は、カーシェアやライドシェアではなく、ファイナンスにある。これはトヨタの「キント(Kinto)」やステランティスの「Free2Move」など他社サービスでも同じ。モビライズの発表会では、ルノーの金融子会社RCIバンクがモビライズ・ファイナンシャル・サービスに名称変更されたことが発表された。

現在、モビライズの事業はルノー・グループ全体の収益の約6%を占めており、その99%はRCIバンクからのものである。デルボスCEOは、2030年までにグループの収益に占める割合を20%まで引き上げたいと考えているが、収益の半分はリースなどの金融サービス、残りの半分はサービスによるものになると明かしている。

モビライズの電動配送バン、「EZ-Flex」コンセプト
モビライズの電動配送バン、「EZ-Flex」コンセプト

モビリティの世界では今、ファイナンスが大きな役割を担っている。モビライズ・ファイナンシャル・サービスのCEOであるジョアン・レアンドロは、「顧客の購買パターンは、直接購入から変化してきています」と語る。

また、モビライズの調査によると、クルマの所有権がレンタル会社にあるオペレーティング・リースの世界新車販売における割合は、現在の36%から2030年までに62%に増加するという。これには、より柔軟なリース形態であるサブスクリプションも含まれる。

そしてモビライズは、2030年までにリース車両を80%増やし100万台とするほか、サブスクリプション車両を20万台に拡大することを目標としている。

また、ルノーは、買い替えの際に古いクルマを引き取り、工場で「再生」して、中古車としてリースする計画を立てている。モビライズも昨年7月、スペインの中古車サブスクリプションサービス「Bipi」を買収している。利用を希望するユーザーは、オンラインで数分以内に申し込むことができるようだ。

これが、自動車会社が考える新しいモビリティだ。設備投資を抑え、カーシェアリングのような難しい事業には手を出さず、自動運転タクシーに望みを託すのをやめ、ソフトウェアを活用し、金融会社と連携してクルマのライフサイクルをコントロールする。購入時に「さようなら」を言う時代は、もう終わるということだ。

ルノー・トゥイージーの後継車 新型デュオ

モビライズの新型EV、デュオは2023年後半に欧州をはじめとする市場で発売される予定だ。

ルノー・トゥイージーの実質的な後継車であるデュオは、カーシェアリング事業者など法人を主なターゲットとする。ルノーは以前、デュオをサブスクリプション形式で提供すると述べていたが、それが個人客を対象としたものかどうかは明らかでない。

新型デュオのベースとなるモビライズの「EZ-1」コンセプト
新型デュオのベースとなるモビライズの「EZ-1」コンセプト

モビライズの最高執行責任者であるフェドラ・リベイロは、「デュオはカーシェア事業者にとって画期的なものです」と述べ、運用コストの低さを強調した。また、デュオは高度なコンピューティング・プラットフォームを備えているという。コネクティビティを強化し、車両の検索や充電、運転体験の向上を目指している。

リベイロは「ゲーミフィケーション」を導入すると述べたが、詳細は明らかにされていない。9月のパリ・モーターショーでデュオのインテリアが公開される予定で、ここでより詳しい説明がなされるものと見られる。

デザインとしては、シェアリング機能に重きを置くという。モビライズのデザイン責任者であるパトリック・レカーピーは、「シェアするためのクルマをデザインしました。単なる言葉遊びではなく、考え方がまったく違うのです」と語っている。

デュオは、コスト削減と整備性向上のために、前後に同じバンパーを使用している。また、バンパーには傷を隠すための特殊なパターンが施されている。シートは簡単に取り外しができ、洗濯も可能だ。

バッテリーやパワートレインの詳細は明らかにされていないが、ルノーは以前、バッテリーモジュールを手動で交換できるようにし、充電を高速化すると述べている。また、先代のルノー・トゥイージーのように、一般的な駐車スペースに3台が入るほどの小型化を実現するという。

デュオは、シトロエン・アミのライバルとなる小型EVである。アミは、ステランティスのカーシェアリング事業のFree2Moveから展開されている。

記事に関わった人々

  • 執筆

    AUTOCAR UK

    Autocar UK

    世界最古の自動車雑誌「Autocar」(1895年創刊)の英国版。
  • 翻訳

    林汰久也

    Takuya Hayashi

    1992年生まれ。幼少期から乗り物好き。不動産営業や記事制作代行といった職を経て、フリーランスとして記事を書くことに。2台のバイクとちょっとした模型、おもちゃ、ぬいぐるみに囲まれて生活している。出掛けるときに本は手放せず、毎日ゲームをしないと寝付きが悪い。イチゴ、トマト、イクラなど赤色の食べ物が大好物。仕事では「誰も傷つけない」「同年代のクルマ好きを増やす」をモットーにしている。

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