なぜマクラーレンはEVレースに参加するのか 単なる「F1チーム」ではない理由

公開 : 2022.05.17 06:05

マクラーレン・レーシングがフォーミュラEやエクストリームEに参戦する理由を、ザク・ブラウン代表に聞きました。

EVレースシリーズへの「電撃」参戦

F1で華やかさと過激さを体現するチームといえば、マクラーレン・レーシングだろう。ノーマン・フォスターの設計によるテクノロジー・センターや、壮大なブランドセンター、そしてチームの繊細さを思い浮かべてほしい。

2016年にロン・デニスが代表の座を降りてから状況は変わり、新リーダーのザク・ブラウンのもと、よりオープンでリラックスしたイメージ作りを目指している。そんな彼らが、埃っぽいサウジアラビアの砂漠の真ん中で無骨なテントを立てている姿を見ると、かなりのカルチャーショックを受けるであろう。傍らに置かれたパパイヤオレンジの電動SUVは、かなり奇妙なものに見えるはずだ。

マクラーレン・レーシングは、メルセデスEQフォーミュラEチームを買収し、来期(シーズン9)からフォーミュラEに参戦すると発表した。
マクラーレン・レーシングは、メルセデスEQフォーミュラEチームを買収し、来期(シーズン9)からフォーミュラEに参戦すると発表した。

マクラーレン・レーシングが気候変動の影響を訴えるために、人里離れた場所を走る電動SUVのレースシリーズ、エクストリームEに参戦するという衝撃的な発表について、ブラウンは「さぞかし、みんなを驚かせたでしょうね」と笑う。これはF1以外のモータースポーツ活動に踏み出したマクラーレンの、最初の一歩にすぎない。来年にはフォーミュラEにも参戦するのだ。

しかし、なぜ?

「マクラーレンには、勇敢で革新的なことを行ってきた歴史があります」と、ブラウンはフォーミュラE参戦発表前に行われたインタビューで語っている。

ニュージーランド出身のレーシングドライバー、ブルース・マクラーレンは1963年にチームを設立し、オーストラリアのタスマン・シリーズに参戦。その活動はすぐに多角化した。

「初期にはF1、インディカー、カンナム(CanAm)など、さまざまなレースに参加しました。マクラーレン・レーシングの仕事はレースであり、F1チームをチーム構成の面で軌道に乗せた今、レース事業を拡大し始める時期だと思いました」

それでも、かなりの変化だ。1980年代と1990年代の隆盛期には、純粋にF1だけに焦点を合わせていた。状況が変わり始めたのは2017年、フェルナンド・アロンソとともにインディアナポリス500に復帰したときだ(マシンはアンドレッティ・オートスポーツが走らせていた)。2年後、今度はカーリンと組んで参戦。そしてアロー・シュミット・ピーターソン・チームと2020年シーズンで提携し、昨年、インディアナポリスに本拠を置くチームの経営権を取得したのである。

ハイレベルなシングルシーターレースであるインディカーは、マクラーレンにとって理にかなったシリーズであり、特に米国でのマーケティングに活かすことができる。フォーミュラEも同様で、メルセデス・ベンツのチームを買収する絶好の機会と、第2世代のマシン(Gen2)にマクラーレン・アプライド・テクノロジーズがバッテリーを供給していることを考えれば、参戦は自然なことと言えるだろう。

しかし、エクストリームEはどうだろう?ターマックにおける華麗かつ繊細な走りで有名なチームが、電動SUVのオフロードレースで何をしようとしているのだろうか?

記事に関わった人々

  • 執筆

    ジェームス・アトウッド

    James Attwood

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    林汰久也

    Takuya Hayashi

    1992年生まれ。幼少期から乗り物好き。不動産営業や記事制作代行といった職を経て、フリーランスとして記事を書くことに。2台のバイクとちょっとした模型、おもちゃ、ぬいぐるみに囲まれて生活している。出掛けるときに本は手放せず、毎日ゲームをしないと寝付きが悪い。イチゴ、トマト、イクラなど赤色の食べ物が大好物。仕事では「誰も傷つけない」「同年代のクルマ好きを増やす」をモットーにしている。

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