【詳細データテスト】トヨタ・アイゴX 1クラス上のシャシーと洗練度 エンジンは非力 価格は高すぎ
公開 : 2022.05.21 20:25 更新 : 2022.06.21 04:52
走り ★★★★☆☆☆☆☆☆
0−100km/h=16.7秒。これは1960年代前半のロードテストから引用した数字ではない。間違いなく2022年データだ。ターボユニットを積む競合モデルが10秒前後をマークし、一般的なクルマは8秒を切る中では、受け入れ難い遅さだ。
トヨタの公称値は14.9秒。おそらくは1名乗車で、エンジンとギアボックスの慣らしも済ませてあれば、これに近いタイムも出ただろうが、テスト車の走行距離は480km程度に過ぎなかった。とはいえ、それでもほとんどのライバルより遅い。それは中間加速も同じで、4速での48−113km/h加速は、先代アイゴと変わらず29.2秒。1.2Lのi10には及ばない。
1.0L直3は低速トルクが足りず、エンストせずに発進するには回転を上げなくてはならない。クラッチの感覚が曖昧で、ミートポイントが手前にあるのも扱いにくさにつながっている。しかし、走り出してしまえば、3気筒特有の唸りを上げながら、6500rpmのレッドラインまで鋭い回転をみせる。それほどストレスなく、113km/h巡航をすることも可能だ。
0−100km/hタイムを損ねた一因は、ギアボックスにもある。引っ掛かりのある動きと狭いゲートにより、2速から3速へのシフトがしづらいのだ。しかし、公道上での普段使いはじつに楽しい。慌ただしく変速しようとしない限りは、短いストロークと機械的なフィールが、力ないパフォーマンスへの不満を埋め合わせてくれる。
72psを発生する回転域をキープしようとすれば、変速の回数も増えるが、それもいやな仕事ではない。ペダル配置が、ヒールアンドトウにぴったりなのもうれしい要素だ。ギア比が均等に割り振られ、2速と3速の開きが大きくないのもありがたい。
とはいえ、全体的にみると、もう少し低めのギア比設定でもよかったように思える。そうすれば、非力なエンジンパワーをもっと有効に使えたはずだ。CVT仕様も設定され、0−100km/hはMTより0.1秒速いという。しかし、そのわずかなパフォーマンスのアドバンテージを得るためには、手動変速をすることになるだろう。
ブレーキングは、113−0km/hの制動距離が45.6mで、ほんのわずかながらi10に後れをとる。とはいえ、上々の結果で、今までテストしたライバル車の中には、これより制動力の低いものも多かった。公道でのブレーキングでは、ペダルフィールはプログレッシブで心地よかった。