ケン・ブロックが見せたドリフトの方法 857馬力の四駆マスタングでサーキット爆走

公開 : 2022.05.19 18:25

編集部は帝王ケン・ブロックの運転する最高出力850ps超のマシン「フーニコーン」に乗り込み、そのドリフトを五感で味わいました。

笑顔が似合う気さくな帝王

ケン・ブロックは、さぞかしご機嫌斜めだろう。彼は昨夜、米国からロンドン・ヒースロー空港に飛び、ミルトン・キーンズ・スタジアム内のホテルで仮眠をとったが、そこでサッカーの試合に見入ってしまったそうだ。

早朝、筆者がシルバーストン・サーキットに到着すると、彼はすでにパドックにいた。パーカーを着て、キャップとサングラスをかけ、エナジードリンクを片手に「朝の3時みたいな感じだよ」と言う。

ケン・ブロック
ケン・ブロック

普通のレーシングドライバーなら、話をするタイミングではないだろう。しかし、ケン・ブロックは普通とは違う。フードにサングラスをかけ、満面の笑みを浮かべた顔に、銀歯が光っている。たとえ疲れ果てていたとしても、ケン・ブロックなら最高出力800psを超えるドリフトマシンで最高の走りを見せてくれる。

今日は良い一日になりそうだ。

6.7L V8の爆音マシンに乗り込む

彼のマシン「フーニコーン」は、アスファルトの上で重心を移動させてハンドリングバランスを変えやすいよう、ソフトに設定されているという。また、全長が長いので、ブロックが得意とする「四輪駆動によるドリフトやパワースライド」は、穏やかで華麗なものになる。

ブロックはシルバーストンの北コース、ナショナル・サーキットの下見に出た。ストレートから始まり、高速右コーナーのコプスを経てマゴッツ/ベケットに向かい、そこで右に急旋回して低速のブルックランズ/ラフィールド・セクションに戻るという、全長約2.6mのコースだ。

ケン・ブロック
ケン・ブロック

ブルックランズで左に折れた直後の、180度以上ある右コーナー「ラフィールド」が、スライドに最適なセクションだ。つまり、ブロックが左コーナーでスライドを開始し、右コーナーに移行して、出口でどうまとめるか、一連の流れを見ることができるのだ。ここが重要なポイントになる。筆者は息巻いて、彼の助手席に乗り込んだ。

フーニコーンの車重はおそらく1500kgくらいだし、速いだろうということは容易に想像がついた。予想外だったのは音だ。6.7L V8エンジンを8300rpmまで回転させ、857psを発生させるのだから、筆者が愚かだった。ヘルメット越しでも音圧で耳が痛くなるほど、うるさい。

加速も同様に驚かされる。V8は1500rpmくらいでアイドリングするが、ブロックは3000rpmくらいで軽くクラッチを滑らせながら走り出す。それからはクラッチをわずらわせることなく、フラットな状態でギヤをつないでいく。このマシンはクロスカントリー用のギアリングを使っているため、比較的ローギアードで、6速ですぐにリミッターに近づいてしまう。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マット・プライヤー

    Matt Prior

    英国編集部エディター・アト・ラージ
  • 翻訳

    林汰久也

    Takuya Hayashi

    1992年生まれ。幼少期から乗り物好き。不動産営業や記事制作代行といった職を経て、フリーランスとして記事を書くことに。2台のバイクとちょっとした模型、おもちゃ、ぬいぐるみに囲まれて生活している。出掛けるときに本は手放せず、毎日ゲームをしないと寝付きが悪い。イチゴ、トマト、イクラなど赤色の食べ物が大好物。仕事では「誰も傷つけない」「同年代のクルマ好きを増やす」をモットーにしている。

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