長距離通勤も特別な時間 マクラーレンGT(3) 長期テスト 寒い朝はクイックヒート
公開 : 2022.05.29 09:45
最高出力620psのグランドツアラー、マクラーレンGT。英国編集部が毎日の通勤に利用し、その能力を検証します。
積算4021km 寒い日の早朝は気を使う
筆者は英国中東部、リンカンシャー州からロンドン北部のミドルセックスへ通勤している。片道200km弱ある、遠距離通勤だ。
そのため朝は早い。マクラーレンGTは、すぐには本調子を出せない。冷えた状態で4.0LのV8ツインターボ・エンジンをスタートさせると、近所の人の目覚まし時計代わりになってしまう。
もっと始動時にうるさいクルマはある。ジャガーFタイプもそうだ。とはいえ、短時間であっても社会的なノイズとはいいにくい。排気量が大きくても、エンジンはすぐには温まらないものだ。
油温と水温のインジケーターがブルーからホワイトに変わるまで、優しくアクセルペダルを傾けながら、早々に自宅を出発する。住宅地の速度制限が低い区間をしばらく走ったあと、片道2車線の高速道路へ入るから、暖機運転には丁度いいのだが。
エンジンが温まるまでは、車内も驚くほど寒い。春でもまだ寒い英国北部では、手袋が欠かせなかった。
そんなある日、エアコンの操作系に「クイックヒート」という機能があるのを見つけた。その名のとおり、短時間で車内を温めてくれるもので、早朝の居心地を大きく改善してくれた。
温まってしまえば楽しく快適
しかし、タイヤは簡単には温度が上がらない。5度以下では圧力センサーが敏感で、パンク警告がしばしば点灯してしまう。4本同時にパンクしたと表示される時は、誤報として無視するようにしているものの、気持ちが良いものではない。
マクラーレンGTは、寒い日の早朝とは相性が余り良くない。だが、しばらく運転してロンドンに近づくほど、楽しさも増していく。
鮮やかなブルーのボディカラーは、交通量の多い朝でも目立つ。運転席は低く、大型トラックの無骨なシャシーが近い。それでも、温まった車内での通勤はとても快適だ。
ステアリングホイールにはラジオのボリュームボタンすらないが、舵を切るという機能だけに拘ったマクラーレンの判断も、評価するべきものだろう。現代のフェラーリとは、対照的ですらある。
標準装備となる、バウワース&ウィルキンス(B&W)社の12スピーカー・サウンドシステムは、音響が素晴らしい。ボリュームを上げることなく、鮮明にラジオを聞くことができる。車内は比較的タイトだが、すべての操作系にも問題なく触れられる。
マクラーレンGTの場合、エンジンルーム上の荷室空間と運転席側が仕切られていないのだが、ノイズも充分遮断できている。ベントレー・コンチネンタルGT並みに静かではなくても、通勤でウンザリするほどではない。