スポーティという言葉が似合う フォルクスワーゲンID. 5 GTXへ試乗 299psの四輪駆動

公開 : 2022.05.29 08:25  更新 : 2022.05.30 19:05

1度の充電で400km近く走ることも現実的

動的能力に長けたID. 5 GTXだが、ツギハギの多い路面や橋桁の継ぎ目などの処理にも優れる。スケートボード構造が生む剛性の高さが発揮されている。

市街地や高速道路など、複合的な条件で試乗したが、乗り心地で我慢を強いられることはなかった。従来的なフォルクスワーゲンティグアンなどとも、相違はない。

フォルクスワーゲンID. 5 GTX(欧州仕様)
フォルクスワーゲンID. 5 GTX(欧州仕様)

エンジンやエグゾーストのノイズがないことで、純EVは一般的にタイヤノイズや風切り音が目立つ傾向にある。しかし、ID. 5の場合はそれも最小限に遮断されている。

純EVのシステムは、フォルクスワーゲン最新となるバージョン3.0のソフトウエアで制御されている。その結果、急速充電能力は最大135kWまで対応するようになった。

出荷時に実装されるのはID. 5が初となり、ID. 3とID. 4もコネクティビティ機能でアップデートされるという。ただし電圧800Vのシステムを採用するモデルには、最大350kWまで対応可能なものもあり、目立って高速化されたわけではない。

またバージョン3.0では、ナビゲーション・システムがルート上の充電インフラを拾い、充電計画も含めたルート提案をしてくれる。途中に、どこの充電器で何分充電するべきか正確に計算してくれるから、着実に目的地を目指せる。

モニターへ表示される航続距離も正確。渋滞や加減速の頻度に関わらず、大きく距離は変化しないようだった。1度の充電で400km近く走ることも現実的だ。

新機能がふんだんで実用的 運転もしやすい

筆者がもう1つ感心したのが、パークアシスト・プラスと呼ばれる機能。最大50mまで、多少複雑なルートでも自律的に駐車してくれるものだ。自宅の敷地の入り口でボタンを押せば、事前に学習させた駐車場までID. 5が自ら戻ってくれる。

ただし、作動中はシステムが頻繁にドライバーへ操作の確認を求めてくる。事前にユーザーからの使用感を得ているというが、もう少し簡素化できたのではないだろうか。

フォルクスワーゲンID. 5 GTX(欧州仕様)
フォルクスワーゲンID. 5 GTX(欧州仕様)

ダッシュボード中央のタッチモニターの下には、タッチセンサー式のスライダー・コントローラーが付いている。エアコンの温度やラジオの音量などを調整できるのだが、クリック感がなく反応もいまひとつ。イルミネーションもないため、夜間は操作しにくい。

多くの車載機能のインターフェイスは、タッチモニターに集約されている。出発前に、予め必要な操作を済ませておく必要があるとも感じた。

フォルクスワーゲンID. 5の訴求力は高い。新機能がふんだんで実用的で、運転しやすい。GTXを選ぶと走りはスポーティだし、ステアリングフィールも良好。見た目も良い。

英国で懸念するなら、その価格。より手頃な予算で、同等の能力を備えるモデルを選べなくはない。近似サイズのキアEV6なら、一層パワフルで動的能力に長けたシャシーを備え、航続距離でも並ぶ。価格も1万ポンド(約160万円)ほど安い。

それでもID. 5は、フォルクスワーゲンらしく装備は充実し、走りは洗練されている。ブランドの魅力もある。有力な選択肢であることは間違いないだろう。

フォルクスワーゲンID. 5 GTX(欧州仕様)のスペック

英国価格:6万520ポンド(約968万円)
全長:4599mm
全幅:1852mm
全高:1615mm
最高速度:180km/h
0-100km/h加速:6.4秒
航続距離:489km
電費:−
CO2排出量:−
車両重量:2167kg
パワートレイン:AC非同期モーター(フロント)+AC同期モーター(リア)
バッテリー:77kWhリチウムイオン
最高出力:299ps
最大トルク:48.0kg-m
ギアボックス:シングルスピード

記事に関わった人々

  • 執筆

    AUTOCAR UK

    Autocar UK

    世界最古の自動車雑誌「Autocar」(1895年創刊)の英国版。
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

関連テーマ

おすすめ記事

 

人気記事